思えば勝海舟という人は、滅び行く幕府と薩長の新政府との間にあって、余人を以って変えがたい仕事をした人でした。坂本竜馬や西郷隆盛などの維新の志士と比較しても、傑出した存在と言って間違いないでしょう。
このドラマでは、江戸城明け渡しの交渉がいかに大変な難事業であったかが説明されていますし、また敗者である幕臣達がその後、いかに悲惨な目にあったかも描かれています。敗者側のから描いた歴史という点でも興味深いです。
田村正和演じる勝は独特の癖があって、なかなかの見ものです。本人が病気になってしまったために、後半で弟の田村亮に交代しますが、田村亮演じる勝は実直真面目な感じで、演じる人によってこうも変わるものかと驚きました。
以上の通りすばらしい傑作だとは思いますが、少々残念だったのが、このドラマでちょっとだけ出てくる坂本竜馬を演じる俳優があまり演技が上手ではないし、また存在感がなくて、どうしても竜馬に見えなかったことです(端役でも、手は抜かないで欲しいです)。それから、大政奉還当時まだ若かったはずの徳川慶喜を、五十代くらい(?)の津川雅彦が演じているのもどうかと思いました(ただし、津川は維新後の明治天皇拝謁のシーンでは、初老の慶喜を見事に演じてますが)。