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腐敗性物質 (講談社文芸文庫)

価格: ¥1,155
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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普段、詩集なんて読まない人も ★★★★★
筆者は1923(大正12)年に生まれた方でありながら、今の我々に通じる普遍的な現代詩を作り上げた。
いわゆる難解な言葉ではなく、「渋谷のパルコ通り」なんていう平易でリアリティあふれる身近な言葉で詩を書いているから、普段詩を読まない方でも楽しめるはずだ。

「おれは<物>だから/詩そのものだ/おれの言葉は所有権者どもの言葉ではない/おれはおれの言葉だけで生きてきた」

わかりやすく卑近な表現を使っているけれども、ユニークで毒を含んだ社会へのメッセージもあり、自己の内面への厳しい洞察もある。
ぜひこの自選詩集をまず読んでほしい。
田村隆一入門篇 ★★★★★
『四千の日と夜』『言葉のない世界』『緑の思想』と初期三冊の詩集に長篇詩「腐敗性物質」「恐怖の研究」、後期の詩集から『奴隷の歓び』を収録。田村隆一の詩業の中でも最も重要な部分のみを抽出した好編集。田村隆一入門として最適な一冊。
誰もが「格好良い」という詩人 ★★★★★
 今までの苦悩の詩は、己の混沌とした内面を吐き出すものが多かったように感じたが、彼の詩はぐるぐると己の中を回っているのを、顎先に手を添えて、冷静に外から客観視しているような、そんな落ち着きがあるように感じる。理屈を抜いて、ここまで素直に初めから「格好良い!」と思えた詩は無かったかもしれない。素直に響いてくる彼の選んだことばのひとつひとつ。詩集の最後に向かうに連れて、なぜか鼓動が早くなり、すうっと現実へ帰っていくような不思議な感覚がある。 彼の詩は、素晴らしい技巧が凝らされた詩とは違う洒落気がある。ことば自体が作られて、飾り立てられてお洒落になっているのではなく、彼のことばの選び方がお洒落なのだ。特別に難しいことばを繰り返し使うわけでもない。日常の中、目の前に用意されたことばを摘み上げて、並べていくかのようである。勿論それは彼のことばへの拘りがそうさせるのだろうし、その並べ方も真似の出来ない彼のセンスなのだろう。「四千の日と夜」、「幻を見る人」、「にぶい心」、「奴隷の喜び」、数々の詩のタイトルだけでも、格好良いと思わず唸りたくなるようなものばかりだ。余計な装飾には頼らない、正に断言的でさっぱりとした男性的な美しさを感じる。 晩年に近づくにつれ、「するわけだ」、「そうなんだけど」、「だったっけ」などの独特の口語的語尾も、絶妙なリズム感を生み出していて、おじいちゃんになった田村隆一がのんびりと呟いている姿を想像してしまう。
日本戦後詩 ★★★★★
「一篇の詩が生まれるために、われわれは殺さなければならない 多くのものを殺さなければならない 多くの愛するものを射殺し、暗殺し、毒殺するのだ」という有名な句、そして「言葉なんかおぼえるんじゃなかった 言葉のない世界 意味が意味にならない世界に生きていたらどんなによかったか」「はじめに膝から折れるように地について彼は倒れた、駆け寄ってきた人たちのなかでちょうど私くらいの年ごろの青年が思わずこんな具合に呟いた「美しい顔だ それに悪いことに世界を花にごとく信じている!」」等、作品中に散りばめられたこれらの言葉の数々。アジア太平洋戦争後の瓦礫の中で産声を上げた日本戦後詩はその後あまりというかほとんど発展せず停滞したままであるが、その出発点にこの田村隆一なる人物が存在していたという事実によって辛うじて「日本戦後詩」というジャンルが成り立っていると言えるのではないだろうか。俗っぽい表現になってしまうけれど読んでいて時に痛快で時に落ち込み、また面白いと感じられる貴重な詩集である。