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作家の値段 (講談社文庫)

価格: ¥780
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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作家たちのいま ★★★★★
昭和時代の文豪たちの、
今の価格はいくらなのか。

下世話な話、興味津々である。

有名作家たちも存命中はいろいろとあっただろうに、
なくなってからン十年。

まさかその後、こういう形での評価を受けているとは夢にも思うまい。
作家の時価? ★★★☆☆
出久根さんの本は総じて、飽きることがないのだけど、この1冊は読み始めはともかく、中盤からダレました。
というのは基本的には古今の作家の古本の相場話に終始するからです。

もちろん、その合いの手に色々なエピソードが絡んでいるのはいうまでもありません。でも、基本的な骨法が同じだと、何編も読んでいると飽きてしまうのです。

古本、初版本、私家本。いろんな本があり、その本の帯の色一つで値段が大きく変わっていくというのは、興味深くもあります。でもそれは小さな玩物趣味の域を出ないような気がするのです。

それに。古本の世界では「蔵書印」は傷として扱われます。でも本が好きで、思い出が深ければ、何かを記しておきたいと思うのが人情です。傷となるのを承知で、傷を付けるのもまた、読書に親しむ者の業なのかもしれません。
あなたが好きなあの作家はいくらか。 ★★★★★
この著者だけにしか書けない、画期的な「作家論」。
単行本が出たときは読みそびれたが、今回一気に通読してしまった。

司馬遼太郎、三島由紀夫、山本周五郎、川端康成、太宰治、寺山修司、
宮沢賢治、江戸川乱歩、樋口一葉、夏目漱石、直木三十五、野村胡堂、
泉鏡花、横溝正史、石川啄木、深沢七郎、坂口安吾、火野葦平、立原道造、
森鴎外、吉屋信子、吉川英治、梶井基次郎……。 

それぞれの作家の、単に古書市場での評価や、書誌学上な視点からのアプローチ、
という通好みの話題ではなく、「古本屋さん」としての実体験に根ざしつつ、
採り上げた作家にまつわる、著者の人柄が随所にじみ出てた好エッセイに
なっているというところが、本書の最大の魅力。しかも、いわゆる「名著」
の相場のような実用的な情報も盛り込んであって、まさに花も実もある本。

ご贔屓の作家に手厚いものの、そこは元は商売人、
けっして“偏愛”にも“書痴”にも陥っていない。
もちろん今や御本人自身堂々たる直木賞作家。さばき方は見事で、
どの作家についても、極上の逸話で引き寄せられてしまう。

いわゆる「人気作家の本」の周縁、待遇、たどった運命。
そのいろいろに大いに啓発され、大いに感心しながら読みました。
ここで著者が描いてみせた「それぞれの作家」のありようを、
読者自身の個人的な評価や、好き嫌いを見据えながら確かめるのも一興。
知られざる古書の値段の付け方とその相場 作家への愛情が感じられるエッセイ ★★★★☆
古書の値段を通して作家の作品に対する深い観察力と審美眼、本を通して作家への愛情が感じられる書でした。
直木賞作家で、高円寺で古書店を営む出久根達郎が過去に扱った古書の思い出やエピソードを小説の内容と共に織りなす知識の深さは古書好きや本好きにとってよいプレゼントだったと思います。

初版本を求める心境はなかなか理解できませんし、帯のあるなしで値段が相当違う実情もマニアではないのでなんとも言えません。ただ贔屓の作家の珍しい作品を読みたいという気持ちはよく分かっています。

梶井基次郎の項で、友人の息子K君が「戦前の初版本なのです。梶井基次郎の『檸檬』。これって稀覯本ですよね?」と電話をよこしてきました。『檸檬』は武蔵野書院版が本当の初版で、昭和6年5月15日に刊行されているそうで、美本なら25万円ということにも驚きましたが、戦前発行の初版も4種類あることは知りませんでした。その当時の梶井の母ひさの看護日誌が登場したり、初版本の写真が掲載してあったりします。結局K君は購入した本は細工本であったことなど、古書ならではの悲喜こもごもが書かれていました。全編にわたって知識の宝庫、といえる内容でした。

取り上げられた作家は、皆物故者ばかりです。司馬遼太郎、三島由紀夫、山本周五郎、川端康成、太宰治、寺山修司、宮澤賢治、永井荷風、江戸川乱歩、樋口一葉、夏目漱石、直木三十五、野村胡堂、泉鏡花、横溝正史、石川啄木、深沢七郎、坂口安吾、火野葦平、立原道造、森鴎外、吉屋信子、梶井基次郎など、綺羅星のごとく、明治大正昭和の文壇を飾ってきた作家です。それらの本の値打や値段は、内容と希少性の両方がマッチしないとだめなのでしょうね。
読めば目からうろこが落ち、儲かる本 ★★★★★
作者があとがきで述べているように「古本屋の作家論」です。
永井荷風の有名な発禁本「四畳半襖の下張」の興味深い内容が紹介されています。
この本で初めて、芥川賞や直木賞の由来を詳しく知ることが出来ました。銭形平次のヒットのおかげで今日のSONYという会社が存続し、また銭形組と行う建築会社が5年前に行った「司馬遼太郎記念館」と「野村湖堂・あらえびす記念館」を建設したのも面白い縁。ミステリー色の「さぶ」を書いた山本周五郎の各品で「〜物語」というタイトルは傑作が多い、直木賞を辞退した唯一の作家とのこと。困窮を極めた樋口一葉の場合は著書は安いけど、手紙の方が高価で、借金依頼の内容なら1千万円はするとのこと。など驚愕の話題が沢山です。読みやすい文章で感動する話題が豊富です。しかも、めったにお目にかかれない本の写真が沢山掲載されて見ても楽しめる最高に素晴らしい本です。

司馬遼太郎の評論や解説で有名なで谷沢 永一「紙つぶて―自作自注最終版」ともども本の薀蓄が深くなる名著です。