文字は優れているから生き残るわけではない・・・
★★★★★
まさに「文字の歴史」の教科書で、それ以上でもそれ以下でもないという印象。
原始時代のグラフィックから始まって、楔形文字、ヒエログリフから各種アルファベットまで、余すところなく解説されていく。
厚いけど文章は読みやすいので、文字好き(どれほどいるのだろうか・・・?)にはたまらない本です。
とはいえあくまで西欧人が書いたものなので、ラテンアルファベットに関する記述が圧倒的に多い。
インド系文字などさらっと表面をなでるだけで不満が残る。
ただ、著者が日本に住んでいたことがあるからか、東アジアの文字についてはなかなか面白い洞察がなされています。
それとともに、本書からは著者の「文字観」がわかり、これがなかなか興味深かったりする。
「文字の存続や影響力を決めるのは、書き方や文字の効率の良さであることはめったになく、むしろ文字を使う人びとの経済力と権力である。」(p154)
などと明確に言い切っているところなど、なるほどなぁと思う。
世の中にはいろいろな文字があるのだなぁ、ということを知るだけでも、十分価値ある一冊です。