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陰の季節 (文春文庫)

価格: ¥500
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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著者の技術の向上が垣間見える本 ★★★★★
 これぞ殿堂入りの短編ミステリー集です。
受賞作、『陰の季節』でもすばらしいと思ったのですが、
他の作品も捨てたものではありません。
一遍を読み終えるたびに著者の技術が上がっていると思いました。
『黒い線』では謎が解けたときに爽快感を感じましたし、
最終話、『鞄』は最後を飾るにふさわしい、最高の良作でした。
こんな展開アリなの!?と叫びそうになります(何とかこらえましたが)。
『クライマーズハイ』『出口の無い海』『ルパンの消息』も読んだのですが、
他の横山作品も読んで見たいものです。
長編小説並の密度の濃さ、内容の深さを持った短編の書き手、横山秀雄の代表作の一つ ★★★★★
私は、これまでに、横山秀雄の全作品を読んでみたのだが、私は、この人の作品を読み進めれば読み進めるほど、この人を、筆力の高さと作品の内容自体のレベルの高さを兼ね備えた素晴らしい作家だと、感嘆せずにはおれないのだ。この人の長編小説にも素晴らしい作品は幾つもあるのだが、特に、この人の短編小説には、絶品といってもいいくらいレベルの高いものが多いと思う。 

たとえば、同じ推理小説の売れっ子作家である東野圭吾の場合だと、長編小説に比し、短編小説となると、一転、ぐっと、小説としての密度の薄さ、内容の浅さを感じてしまうことが多いのだが、横山秀雄の短編小説は、長編小説並の密度の濃さ、内容の深さを持った読み応えのある作品が多いのだ。この人は、図抜けた短編推理小説の名手だと思う。 

本書以外の短編集(短編集とも長編ともつかない「影踏み」は除く)にも、秀作と目される作品はごろごろとあり、各作品の平均レベルも高いので、どの短編集を彼のベスト作と見るかは、読者それぞれの感性によるところも大きいとは思うのだが、私は、本書を、彼の短編集の中でも一、二を争う高いレベルにある、彼の短編集を代表する作品だと思っている。 

特に秀逸なのが、「地の声」と「鞄」だ。「地の声」は、文句なく、この短編集のベスト作で、大どんでん返しに、さらにおまけのどんでん返しの付いた結末は、一級品の本格派長編ミステリにも全く劣らないレベルにあると思う。「地の声」というタイトルに込められたあまりにも深い意味も、読者の胸を打つ。「鞄」も、ある意味、凄まじいまでのどんでん返しが効いた作品だ。どちらの作品も、組織という階級社会の中で、常に上を目指してしのぎを削っている男たちの、哀しいまでの心の内、凄まじいまでの心の内が、実に生々しく描かれているのが出色だ。色々な意味で、これらの作品を、身につまされる思いで読んだ読者も多いのではないだろうか。 
D県警の管理部門を主役に立てた4篇の短編集 ★★★★☆
本書はD県警の管理部門を主役に立てた4篇の短編集である。そのなかにも人間ドラマが繰り広げられます。4編ともそれなりに楽しめる作品です。

4編の短編を紹介します。
・陰の季節:警務課で人事担当の二渡真治(別の短編でも登場する)の話。大物OBこと尾坂部が辞めないのでその説得をしないといけない。尾坂部の気持ちに共感するところがあり、私は一番好きな話である。
・地の声:監察課で警察関係の賞罰を調査する新堂の話。タレコミがきて、生活安全部の曾根について調べることになる。
・黒い線:警務課婦警担当係長の七尾の話。婦警の平野が出社してないので、探すことになる。
・鞄:秘書課で議会対策をしている柘植の話。県議の鵜飼からの爆弾質問の内容をあらかじめ把握し、その質問をやめさせたい。
素晴らしいです。 ★★★★★
この人の短編集は本当に面白いものばかりです。

心理描写いつも素晴らしいです。

この本は4つの短編から構成されていますが、どれも楽しめます。
スポットライトを当てられるのが、管理部門の人間です。それだけで、他の警察小説とは一線を画しますが、読んでみて更にその内容の面白さに驚かされることでしょう。

『動機』や『第三の時効』を気に入った方は絶対に読んだ方が良いです。
その他の方も本当のオススメですよ!
リアリティに共感した ★★★★☆
警察小説であるが、凶悪事件を追ったのではなく、
警察組織そのものを描いた小説とは思わなかった。
ありありと淡々と描いてくれる。
社会派だけどすごく読みやすい。
ユーモラスではないが堅苦しくもない。
「周りにもこんな奴おるおる」と、
ただそのリアリティに共感せずにはいられない。