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仕事と日本人 (ちくま新書)

価格: ¥945
カテゴリ: 新書
ブランド: 筑摩書房
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「労働」「はたらく」ということを深く調べる ★★★★☆
「働かざる者食うべからず」。仕事をしなければお金は稼げないし、食べてもいけない。
でも、今やっている仕事にはどうしてもやり甲斐をもてない。だから、生きるためと余暇を楽
しむために、自分を殺して嫌々働いているって人、意外と多いんじゃないだろうか。
本書はそういった「労働観」の成立を、「労働」という字の由来から当時の文献まであらいざ
らい振り返っていき考察していく。本の最後の引用参照文献目録を見るとわかるが、とにかく
膨大な資料が押さえられている。

我々は毎日、「遅刻」をせずに会社に出勤し、8時間の労働と数時間の「残業」を経たのちに
帰宅する、という暮らしを繰り返している。
しかし、この本を読んでわかるのは、そのように定時に赴き、時間という観念に束縛されて
「労働」、あるいは「残業」するということが、ごく最近、少なくとも戦前の時代になってよ
うやく成立し始めた、一つの制度であるということである。
それ以前には、それ以外の働き方が当然あったし(課題本位)、日本人の勤勉というイメージ
はそもそも、近代以降の産物なのである。

この本を読んでわかるもう一つのことは、人間の「消費欲」という名の煩悩は、殺しても殺し
ても湧いてくるということである。人間どんなに豊かになったって、その飽くなき消費欲と、
消費によって満たされるはずの自己実現と自己顕示の欲求は治まらない。だからもっとお金を
欲し、もっと労働に勤しむのである。本書の筆者武田氏の言う「働くことそのものに意味を見
出すような働き方」が出来るようになるのは、まだまだ先の話なのかもしれない。
「仕事観」の整理のために ★★★★☆
本書のはしがきで引用される「働きマン」のなかのセリフ「私は仕事したな、と思って死にたい」。
このセリフは、幸せな職業人生を送った(または現に送りつつある)、極限られた人々にしか勝ち取れない言葉では、本来はないはずだ。人生の最も活動的な時代、睡眠以上の時間を費やす「仕事」に対して、賃金という対価を得るため以上の意味を見出せない現実に本当に心のそこから満足している、といえる人は少ないのではないだろうか。
本書は「働くこと」が即「生きること」であった時代から日本における労働観の変遷をたどり、労働=生産管理の必要上生じた「就労時間」や「賃金」、「残業」といった近代的諸概念が、「働くこと」の本質的意味を見失わせているのではないか、と問いかける。もちろんその答えは読者一人一人の考え次第。「飯の種」として割り切って働くことを否定するわけではない。
どんな結論に至るにせよ、管理職も新入社員も、定年間近の方も非正規の方も、時にはこんな本を読んで、「自分が何のために働いているか」について考えてみることも大事だと思う。
仕事観の起源 ★★★★☆
近現代日本経済史を専門とする著者による日本特殊的な労働観、仕事観を実証的に説く1冊。
しかし、「日本特殊的」といっても、こと労働観に関する限り極めて歪なのが日本的の意味であって、最近のファストフード企業の管理職問題(残業不払い)などを見るにつけても、その背景にあるメンタリティが闡明されていると思われる。ここでメンタリティとは、歴史的なものの謂いである。
ジャパン・アズ・ナンバーワンの時代から幾星霜!
とんでもないただ働かせ会社やピンハネ企業は論外としても、長時間労働・残業とこれと裏腹な非正規社員の急増等々、現在ニッポンの労働を考える際に有用な知識が数多く解説されている。
書中にも引用されているレギュラシオン経済学の山田鋭夫の言う「従業員の義務の無限定性」は「終身雇用」や高い帰属意識を見返りとしていた。あるいはセットであった。それらは賃金カーヴ上昇が当然とされ、GDPの拡大を前提としつつも、ある意味平等性に裏付けられた将来への希望があり得たのだ。しかし、終身雇用やベアを持続できなくなった会社は、「従業員の義務の無限定性」を多分に残したままで「成果主義」などというでたらめなアメリカンイデオロギーを導入してしまっている。これは本家より一層でたらめだ。
尤も後者(義務の無限定性)も今や変わりつつはあろう。とはいえスペシャリストとしての使い捨てという雇用形態も経団連のお偉い方が模索しているところである。非正規のワーキングプアやフリーター、外国人労働者に加え、スペシャリストまでが使い捨ての運命にある。そしてこうした点においては、決して日本特殊的とも言えず、アメリカンになってきている。
現在サブプライムローン崩壊の最前線アメリカでは、IT技術者が食糧の配給を待つようなことになっている。
とにもかくにも、「働けど働けど」というワーカーが数多く存在し、国民皆保険という数少ないニッポンの誇りさえ消失しようとしている現状、正社員でもいつ過労死するかもしれないという現状がある限り、先進国も何もあったものじゃない。はっきり言おう。ゴアらがのたまう所謂「自然環境問題」が第一の問題ではない。労働者の仕事環境問題こそが、日本国憲法に謳われる生存権の危機として第一のものなのだ。マズローなんぞの浅はかな段階説でたとえるなら、安全・安心さえママならねえということではないか。年金、障害者福祉、高齢者医療の問題とて同断である。
マルクス先生は言いました「人間は飯を食わねば歴史をつくれない」と。
資料としてなら星5つ ★★★★☆
明治から戦前、高度成長期にまで範囲を広げて、日本の労働観と雇用文化の成立を
まとめてある。それなりにまとまっており、一つの俯瞰的な資料としては十分価値がある。
また、経済効率一辺倒の労働を見直すべきとの意見もそのとおりだろう。
それは労働者だけでなく、企業にとってもビジネスモデル転換を進める上で必須なのだ。
“残業自慢”は、いまや社会のお荷物でしかない。

ただ、そこから+αの筆者の洞察は浅い。結局のところ、労働者の自立と多様性を認める
以上、労働市場の流動化と規制緩和は必然なのだ。年功序列の崩壊は誰にも止められない。
そして筆者も言っているとおり、年功序列も終身雇用も、戦後に普及した最近の習慣で
しかない。

でも労作なので座布団4枚。
さまざまな視点から経済を紹介 ★★★★☆
労働に関する人類、特に日本人の捉え方の変遷とそれをもたらした社会環境について、多くの引用を交えながら解説しています。
経済学での「労働は苦痛」という「常識」はマルクス経済学が生み出したというのは慧眼でした。また報酬のない労働について評価しない経済学というのも然り。経済は私にとっては専門外ですが、楽しく読めましたし、さまざまな新しい視点も参考となりました。
ただ引用したグラフや表に発表年の記載がないため、いつの時代の話なのか、注意して本文を読んでいないと混乱することがかなりありました。