音楽的多重人格
★★★★☆
1975年7月、サンフランシスコ、ウォーリー・ハイダー・スタジオ、ファンキー・フィチャーズ及びロスアンゼルス、ヴィレッジ・レコーダーズ、クリスタル・スタジオにて録音。独特なアルバム・ジャケットはDario Campanileの手によるモノだ。
マイルスの怒濤のようなセッションにおいて、自身の中の音楽的変貌を最も劇的に遂げたのはハービー・ハンコックだとぼくは思う。生粋のアコースティック・ジャズ・ピアニストだったハービーはマイルスとの時間の中で完全に『改造』された。そして誕生したのは音楽史上で類を見ないほどの音楽的多重人格者だった。
1973年の『ヘッド・ハンター』以来、ハービーは急速に自らの中に発生した新しい音楽的人格を発展させていく。つまり『エレクトリック・ハービー』だ。新人格はアープ・オデッセイ、プロ・ソリスト2600、クラヴィネット、オーバーハイムといった、その頃続々輩出された名器たちを操り、新次元の音楽を創造していった。本作はその過程の一枚と言える。
ハービー自身も周りを固める面子も、その『新人格』を愉しんでいる。本作ではウェイン・ショーターも光っている。
ファンキー・ポップで楽しめる
★★★★☆
1曲目、ワーワーワトソンのリフ。いいですねぇ。のれます。楽しめます。
ジャケ絵の異様さ(!)と楽曲の地味さ(?)で評価が低いようですが、ファンキーでポップ! 十分に楽しめるアルバムです。楽しんで聞きたい人に、おすすめです。
これぞ♪
★★★★★
これぞファンク!ハービー・ハンコックここにあり!!Hang Up Your Hang Upsがカッコよすぎます。ワッコーンのギター音とともにワゥ・ワゥ・ワトソン、レイ・パーカーの刻み、ポール・ジャクソンのベース。これだけでヤバイ。そこにハービーの鍵盤が乗るんだから、文句あっか、こら?ですよね。時代がかるとこもまた。2年位前、この曲がジャネット・ジャクソンの All Nite(Don't Stop)にほとんどまんまサンプリングされたのも記憶に新しい。ティンバランドでしたか、あの曲のプロデュース。この時代のハンコックのビート、やっぱりカッコいいですよね
ハンコックのブラック・ファンクの頂点!
★★★★★
『ヘッド・ハンターズ』に始まり、『スラスト』に続き、本作『マン・チャイルド』はハンコックのいわゆるブラック・ファンク三部作です。
分かりやすいリズムの強調とシンセサイザー等のエレクトリック・インストルメントの全面的な導入、ベニー・モウピンのソロとハンコック自身のエレピのソロによるジャズ・フレーバーが特徴と言えるかもしれません。『スラスト』以降はワー・ワー・ワトソンのギターのカッティングが隠し味となっています。
ハンコックはこの頃スティービー・ワンダーの名盤『キー・オブ・ライフ』にも参加しており、そのお返しにスティービー・ワンダーが本作に参加しています。それだけではなくスティービー・ワンダーは、シンセサイザーによるワン・マン・オーケストレーション志向、ブラック・コンテンポラリー・ミュージックのポピュラリティー志向等、ハンコックのその後の活動に影響を与えているような気がします。
特に本作を境にして、ハンコックの活動はエレクトリック・ミュージックとオーソドックスなジャズの2本立てになっていきます。本作はジャズとエレクトリック・ミュージックが同じウエイトで混在していた最後の作品と言えるかもしれません。
タイトル曲のかっこよさはこの時代ならでは
★★★★☆
「ハング・アップ・ユア・ハング・アップス」のタイトなグルーブとシャープなホーンセクション、そしてギターのカッティングが、それまでのヘッドハンターズ路線に新たな方向性を付け加えている。エンディング部分のアコピ・ソロもかっこいい。