パスか言葉か?
★★★★★
メキシコが生んだ巨匠オクタビオ・パス。
本書はパリ時代にかかれた作品を集めた短篇集。
しかし「短篇集」とはまったくの便宜上の分類でしかない。
なぜなら散文の姿をした詩が本書には溢れているからだ。
そのような小篇が30強、「詩人の仕事」「動く砂」「鷲か太陽か?」の
3つのセクションに整理されて収まっている。
パスの言う「生死に関わる文字の群れ」との格闘を、想像し、味わい、
それぞれの読みたかで読む。
これが読者に課せられた仕事だ。
「鷲か太陽か?」は、メキシコ古来からあるコインで物事を決める作法。
表か裏か。パスに属す言葉、言葉に属すパス。言葉とパスの融解…。
恐るべき存在感のある珠玉の作品だ。