漢文、漢詩、漢字の知識が不足を痛感させられます
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無知とは恐ろしいものです。自分では、少なくとも漢詩は好きだとは思っていましたが、『佩文韻府』など中国の辞書は知りませんでした。こうしたことを恐ろしいと思わないと、戦前の軍人のようななんちゃって漢詩を書いて恥じないようになってしまうのかな、と思います。
平仄を整え、中国の詩語で構成しないと漢詩にはならないわけです。しかし、いまのぼくなどよりも100億倍ほども勉強していたであろう漱石先生でさえ、時には平仄を整えられなかったりするものも散見されるというのは、なんと恐ろしいことでしょうか。
ざっと、旅のあいだ中、この本を読んでいて、やはりいいのは、大量吐血した修善寺での出来事の後に書かれた五言絶句の一群と、死の直前、それでも『明暗』を書き続けていた時に並行して残された七言律詩の連作です。
死の直前に詠まれた七言律詩の一節《夢散蓮華拝我回 夢に蓮華を散じ我を拝して回(かえ)る》なんていう詠いっぷりはすごいな、と思います。まさに絶唱。