「おかめ団子」…ほろりとくる噺をさせたら、志ん朝の右にでるものなし、と思わせる一席。下手をすれば、押し付けがましく、べたべた嫌らしくなりがちな「親孝行」という題材を、朴訥で優しい大根売りを実に上手く演じ、聞き手が「ああ、よかったな」と素直に思えるものに仕上げている。個人的には、ぎすぎすしたニュースや下世話なテレビ番組を観るのが嫌で、こればかり聞いている時がある。
「茶金」…本来、上方落語。舞台が京都なのに、登場人物全てが、江戸弁で話している。しかし、歯切れよく心地いい江戸弁が身上の志ん朝が演じるのだから、これはこれで成功していると言えるだろう。何より、それまでずっと江戸言葉で通しているのに、この演目での茶金の決め台詞一言のみ、京都言葉で発せられるのが良い。それだけで、爆笑してしまった。