中世とは騎士道物語が全盛の時代なのですが、これは英国の古い作品(アーサー王物語やブリタニア列王史など、ケルト系を含めた神代の物語作品)をまとめて、文学作品として一貫性をもたせ、解説をつけたものです。
内容としてはよいものです。アーサー王伝説もよくまとまっており、また(原本が作られた当時では)最新のテクストであったマビノギオンも収録、物語として収められており、充実した内容となっています。
こういった作品に初めて触れるという人には格好の本だと思います。
ただ、何とかならないかと思うのが本の題名です。もとはThe Age of Chivalry(騎士の時代)というもので、騎士道がどういったものか、といったのをメインにすえたものです。内容も先述したように、マビノギオンやアーサー王伝説を含めて、いわゆる神代、つまり伝説的なものです。
しかし、中世に流行したものはこういった伝説だけをもとにしたものだけではありません。スペインのアマディス・デ・ガウラなど、時代背景、内容もさまざまな作品があります。つまり神話だけが騎士道物語ではないわけですが、この本にはそういった作品は収録されていません。ある意味看板に偽りありというわけです。この本では、騎士道物語の一端はうかがえるでしょうが、この本が収録しているものは、ドン・キホーテがほれ込んだ騎士道物語のあくまで端の部分だけであるということをこの題名はあらわしていないと思います。
「西欧の芸術文化を理解するにあたって、なくてはならない知識」は神話に 次いで騎士物語である、との考えのもとに翻訳出版された書。 原典は米国のThomas Bulfinch (1796-1867)のThe Age of Chivalry(1858) で、いささか古いが、広範囲にわたる記述で、騎士物語に関して幅広い知識が 得られる便利な本である。