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ニーベルンゲンの歌〈前編〉 (岩波文庫)

価格: ¥819
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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いいねえドイツ古典 ★★★★☆
これは1000年前後成立した物だと言われる。伝承の集体系?ちょっと勉強が足らないので。ありきたりな物語構成だけども、贅を凝らした情景描写、またはテーマ文章の挿入の仕方。なかなか勉強になる。
しかし、ありきたりな展開とか綴ったしその通りなんだけど、人間の描写がリアル過ぎる。魔法の道具以外と神話的な伝承以外は。やはりドイツ古典は侮れないという事で。
圧倒的な力強さ ★★★★★
他の方が書かれているとおり、あまりにも有名な古典的傑作。そのダイナミックなストーリー、勇敢で情熱的な登場人物、行動に滲み出る思想精神の圧倒的な力強さに引き込まれ、飲み込まれてしまう。男の私からすれば、向こうの女性はかくも強いのかと驚嘆させられ、その嫉妬心には恐ろしくなる。鴎外の描く日本の女性の強さともまた違う。
登場人物の強さは超人的である。精神の高揚とともに、また物語の展開によってその強さもダイナミックに変化する。多少の矛盾などあざ笑うかのように力強く突き進む。
この物語は、血、血、血の嵐である。血が飛び、血が流れ、血が飲み干される!これほどまでに血なまぐさい物語もそうないのではないか。この物語は、至るところに熱き血潮が通っている。それは脈打ち、噴出し、地を覆いながら、しかしそれでも尽きることがない。
今の時代を舞台にしてこのような物語が物語として成立することは不可能だろう。それだけに物語として読まれ続けるだけの価値がある傑作。
愛の人ブリュンヒルド ★★★★★
この本には,二人のヒロインがいます。クリームヒルトとブリュンヒルドです。
『ニーベルンゲンの歌』では,クリームヒルトの方が目立っていますが,ちょっと,ブリュンヒルドのお話を。

この話の原典ともいえるゲルマン神話伝承では,クリームヒルトよりブリュンヒルドの方が主役です。さらにゲルマン神話伝承では,ブリュンヒルドはジークフリートの恋人で,ジークフリートの火葬の際に,自分も火の中に飛び込んで果てる烈婦です。

そちらを先に知っていた僕は,「ブリュンヒルドはジークフリートが好き」という意識が常に働いてしまい,彼女のセリフの一つ一つを裏読みしていました。つまり,彼女の行動は,屈辱からではなく,愛と嫉妬ゆえの行動だというわけです。
当然,作家は原典の伝承を知っているわけですし,あながち間違った読み方とも思っていません。

この本の後編では全く活躍しませんが,2度目に読むことがあったらは,クリームヒルトではなく,ブリュンヒルドに注目して読み直してください。
夫のために一族皆殺しにするクリームヒルトより,嫉妬のために好きな人を殺してしまったブリュンヒルドの方が,むしろ共感できるかもしれません。

名誉、美徳、高慢そして復讐 ★★★★☆
英雄である夫ジーフリートを卑劣な策略によって殺された、美しくも気高い妻クリエムヒルトによる復讐の物語。

前編では、絢爛豪華なジーフリートの栄華と美徳が、女どおし(クリエムヒルトとブリュンヒルト)の些細な虚栄心から、もろくもうち砕かれる様が描かれ、後編では、復讐に燃えるクリエムヒルトと、その復讐の火に焼かれ、自らと一族の滅亡の運命を予言されながらも必死に抵抗しようとする騎士ハゲネの姿が描かれます。

神話的な英雄の世界、名誉と美徳を重んじる中世的な騎士道精神、そして、高慢から身を滅ぼすこととなる人間の姿が絶妙にブレンドされて、リズムのよい叙事詩として描かれています。

不思議なのは、どちらかというとクリエムヒルトに同情的に描かれている前編に比べ、後半は、その敵であるハゲネの活躍を中心に、クリエムヒルトが徳を失った単なる復讐者として描かれていることです。

現代的な小説の感覚からすると、あくまでクリエムヒルトの復讐を美徳として描く方がしっくりとするのですが、これは時代と文化的背景の違いなのでしょうか。

同様の登場人物が、違う役割で登場するワグナーのオペラ「ニーベルングの指輪」も併せて観てみると面白いかもしれません。

ゲルマン民族の心象風景-蘇る英雄たちの面影 ★★★★☆
 「ニーベルンゲンの歌」は世に名高いゲルマンの英雄譚であり、不世出の英雄ジーフリト(ジークフリート)の冒険と、その妃クリエムヒルトによる復讐の物語です。絢爛にして豪華、勇壮にして悲壮な数々のエピソードによって彩られていますが、この物語の全編を貫く縦糸として「運命の影」ともいうべき重低音が基調をなしているように思います。人々は運命の見えざる力によって絶えず支配されているのであって、楽しい祝宴や武技競技など今日の栄華を描く場面なども、やがて訪れる滅びのための前奏曲であるかのように、そこはかとない緊迫感をもって語られています。

 また、免れ難い滅びを目前にしつつもなお死力を尽くして戦いを挑む勇者たちの姿は、運命の力に雄々しく抗おうとする気高さを象徴しているように思われ、この物語の英雄主義にいっそうの華を添えています。読みすすめるにつれ思わず力が入ってしまい、自然にシリアスな気分になってしまいますが、そうした点も含め、ゲルマン民族の典型的な心象風景が描き出す華麗なタペストリーと言えるのではないでしょうか。
 なお、「フン族のアッティラ」といえば中世欧州を恐怖のどん底に陥れた恐るべき異教の大酋長というイメージが一般的だと思いますが、この物語ではエッツェル(アッティラ)王は高潔で仁慈の騎士として描かれており、この扱い方に興味を覚えました。これもやはり異教時代のサーガの痕跡なのでしょうか。