素晴らしい「日本人論」〜最後の30ページは圧巻です。
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1900年、当時の国際社会のなかで、「遅れてきた青年たち」であった日本人がなにを思い、どう行動したか、それを振り返るなかで、これからの日本がどうあるべきかを語った書。著者は、商社勤務を経て、現在は多摩大学学長、三井物産戦略研究所会長などを務める寺島実郎。
上下500ページにわたる膨大な書であるが、明治期の代表的な日本人の足跡をていねいかつ淡々と辿っており、たいへん読みやすい。そして、抑制した叙述の行間に著者の熱き思いが透けて見え、上巻、下巻と読み進めていった。
だが、淡々とした文体、というのは著者の計算された抑制である、ということがハッキリするのが最後の30ページ。
最後の30ページの「総括」と「あとがき」、そこで著者は、それまでの抑制を解き放ち、熱き思いを綴っている。63歳の寺島実郎が、まるで明治期の青年のように危機感と熱き思いで綴った最後の30ページ。圧巻の30ページであり、読みながら私は目頭が熱くなった。
忙しい人は、最後の30ページだけでも読んで欲しい。そして、その30ページに感動したなら、最初から読んで欲しい。日本がこれからの国際社会のなかでどうあるべきかを考えている人、そして、自分自身が生きる目的を見いだせていない若き迷える人、そんな人たちに読んで欲しい。