ガブリエル・バンサンの表示の描き方やデッサンは実に様々で生き生きとそして今にも動き出しそうな力があります。天国の天使達の日常は、朝から晩までテレビを見て同じ毎日を繰り返す日々。秩序や知識、後光をモットーに個人や個性を認めない世界と…実に珍妙な世界。しかし実際はそうかも知れません。生きるとは何か?幸せとは何かを絶えず問うています。それにしてもまたバンサンさんのデッサン力は素晴らしい。何て多くの表情や表現があるのでしょうか…。此方は大人向けの絵本でなかなかのボリュームがあります。

天使セラフィーノはみんなと同じように出来ません。
「ま、好きにさせてやりましょうや」・・・大人の天使たちはいいます。
セラフィーノみたいな○○くんのママはここでウンウンと頷いてしまいます。
でも中にはセラフィーノのワガママに「勝手は困る、わしらが困る」・・・という大人の天使たちもいます。
ここでも○○くんのママはウンウンと頷いてしまう。

バンサンはさらさらと流れるようなデッサン画によって、
めまぐるしく変わる表情を絵本から溢れさせています。

セラフィーノの表情は中でも秀逸で
天上界は退屈、最低！！　と口が裂けんばかりの大あくびや
どうしてこんなに顔をめちゃくちゃにして泣くんだろうという、子供独特の泣き顔や
どうしてなの・・・？という困り顔。
困った君・セラフィーノに対するバンサンのユーモアに満ちた温かいまなざしが
伝わってくるようです。

今江祥智さんのほのぼのとした訳と共に、ガブリエル・バンサンのデッサン画が生命を吹きこまれたかのように、生きている。やんちゃな天使セラフィーノのことばと絵を通じて、「創造することは？」「生きることは？」と果てしなく正解のない答えを投げかけている。

それにしても、天国の大物ゲストも登場するとは！彼らもセラフィーノの絵には目をみはったに違いない！だって、ガブリエル・バンサンそっくりの絵なんだから。