藤原定家の作品として『百人一首』を読む
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『百人一首』は最も一般に親しまれている古典で、その注釈書もおびただしい数が出ていますが、その方針は『百人一首』をひとつの藤原定家の作品として読むというよりは、百首の歌をバラバラに読んでいるものがほとんどです。島津氏のこの本は、藤原定家がどのような解釈をしたかという視点でひとつの作品として読んでいる点が、他の注釈書と異なります。だから、たとえば、落語でも有名な業平の「ちはやぶる…からくれなゐに水くくるとは」は今日の『古今集』研究では「水をくくり染めにするとは」解釈されていますが、定家はこれを「水くぐるとは」と読み、「紅葉の下を水がくぐるとは」と解釈しています。従って、『百人一首』として当該歌を読む場合も、後者の解釈を採用すべきなのです。