これって日本のライブドア事件と一緒!? と思わせる、リアル感満点のドキュメンタリー。売上高で世界第16位にまでなったエネルギー卸会社「エンロン」が、突然の倒産。その裏では、何年にも渡って粉飾決算が行われ、巨大な利益を上げるため、カリフォルニアで故意に大停電を発生させるなど、信じがたい不正があったことが発覚する。内容は一見、社会派で難しそうなのだが、誰にも分かるスリリングなエンタテインメントになっており、アカデミー賞候補になったのも納得の一本だ。
巨大企業の裏側も興味深いが、本作がフォーカスを当てるのは、上層部がみせる人間の本質。道徳的にはどう考えても悪いことをしているのだが、会社の利益を落とさないという名目があるので、本人たちは一切自覚ナシ。もし自分が同じ立場になっていたら…と思わせてしまうのも、本作の怖さだ。その他、内部告発するスタッフ、解雇されて困り果てる社員など、登場するすべての人物が会社倒産までの実態をスキャンダラスに盛り上げていき、最後まで目が離せないおもしろさ。(斉藤博昭)
次の世代まで語り継がれなければいけない神話
★★★★★
まったく知識のない人や興味のない人も、
この作品を見れば、この驚くべき事件の真相が分かります。
タイトルの固さやフィクションという形式を毛嫌いせずに、一度、観て下さい。
知らない人には新たな開眼となるでしょう。
エンロンという企業がいかにあくどかったかがよく表現されている
★★★★★
アレックス・ギブニー監督のドキュメンタリー映画。これは、強烈に面白い。そこらへんの映画の悪役、例えば「ハリー・ポッター」のボルドモートやバットマンに出てくるジョーカー、スターワーズのダース・ベーダーなんかより遙かにエンロンのCEOはえぐくて悪い。そして、エンロンという企業自体も超極悪企業で、サイボーグ009の死の商人なんか、全然可愛いものである。そういう意味でエンロンこそ、サイボーグ009やバットマンなどで懲らしめられる対象である。ということが非常に分かりやすくこの映画では表されており勉強になる。
嘘つきの研究をするには、うってこいのいい素材である。ポイントは「納得しない人をひたすら馬鹿呼ばわりすること」、「嘘を嘘で塗り固めて、嘘による世界を構築すること。その世界の中では、嘘は嘘でなくなるような状況をつくりあげること」、「分析されない将来の話をすること。現状や過去の話は分析されてしまうが、まだ来ない将来の話は100%否定することはできない」、「嘘つきのチームをつくり、スクラムを組むこと。エンロンも株アナリストや公認会計士までも巻き込んだ嘘のコングロマリットをつくりあげたので、まともな人が真っ向から否定するのに時間を要した」ことなどであろうか。
ちょっと、こう書いていたら勝間和代が頭をよぎった。勝間和代とひろゆきの対談を聞いた後、このエンロンの映画から導かれた仮説で彼女を分析すると、彼女が嘘つきであることが分かる。とはいえ、これは映画の内容とは関係ないが。まあ、そういう分析力も身につく良質な映画である。
会社とは?何のために働くのか?といったことを考える材料を与えてくれる作品
★★★★★
大企業の汚職による破綻を描いたノンフィクション映画。
「エンロン」という会社をご存じだろうか?
北米最大の天然ガス取扱い企業として、一時は米国7位の規模を誇り
時価総額は700億ドルを記録。
フォーチュン誌で6年連続最優秀企業に選ばれるなど
誰もがその価値を認めていた企業である。
しかし、実態は人間の欲望で渦巻いていた会社。
政治家と協働し価格操作したり、負債を隠蔽を行ったりといった悪行を働く。
会計士や銀行マン、はては弁護士事務所など監視する立場の人間はいたが
彼らもエンロンからお金をもらい働いていたため、本当のことは言えず。
時価会計を悪用し、現状を隠し通していたため、3万人が職を失い、
20億ドルもの年金基金が失われるまで公に出ることはなかった。
「虚業」の行き着く果ての物語
★★★☆☆
1985年の創業以来、規制緩和に乗じて急成長し「新時代のビジネスモデル」ともてはやされながら2001年に破綻したエネルギー卸売り会社・エンロン。その崩壊を追ったドキュメンタリーである。
表向きエネルギーという実需を扱いながらも、エンロンの本質は利潤だけを追い求める「虚業」だった。粉飾決算で高収益を装い、上昇した株価をさらに収益に組み込むことで「優良企業」のイメージを増幅。電力市場が自由化されたカリフォルニアでは発電所の停止や州外への送電によって意図的に電力不足を生み出し、電力価格を通常の20倍以上に吊り上げることで暴利を得た。やがて幻のビジネスモデルは行き詰まり、経営陣が手持ちの自社株を高値で売り抜けて巨額の現金を手にする一方、社員は職を失い、企業年金の原資だった株式も紙切れと化す。
確かに悲劇だった。しかし本当の悲劇は(作品中ではあまり触れられないが)、職を失い、老後の保証をただの紙切れにされ、高い電気料金に苦しんだ被害者の多くが、おそらく一方では「自由競争」「貯蓄から投資へ」「良い社会とは市場原理で動く社会」といった新自由主義的なスローガン、この事件を起こす構造そのものを生み出した人間たちの主張に、無邪気に頷いていた事かも知れない。そしてそれは、当時の米国の路線に全面的に追従する経済政策をとり続け、結果として雇用不安や公共サービスの崩壊を招く要因を作った元首相が、未だに「首相に最もふさわしい人物」として圧倒的な支持を受け続ける日本にも共通する問題だろう。
作品は主に記録映像とインタビューで構成されているが、全体としてややまとまりに欠け、背景(例えば401kとは何か)に関する解説が少ないため米国人以外には分かりにくい部分も多い。付属の小冊子にも補足説明があるものの、内容を理解するためには多少の予備知識が必要かも知れない。
規制緩和がもたらすもの
★★★★★
西海岸の電力の供給と販売を牛耳るエンロンは、
意図的に停電を起こし西海岸の電力需要を高騰させる。
そして跳ね上がった電気料金で大儲け。まさにマッチポンプ。
当然会社の評判は落ちるが、莫大な収益に目が眩んだ経営者たちにカリフォルニア州民の声は届かない・・・・
一方インド進出で大穴、オンデマンド事業で大穴と他部門ではとても埋めきれない穴が広がっていく。
止めとばかりに911事件が起きてアメリカ経済全体が冷え込み、エンロンの破綻は決定的となる。
粉飾決算で破綻を隠していた経営陣は暴落前に株を売りぬき(インサイダー取引)会社を「勇退」するなどして保身に走る。
というお話。
カリフォルニア計画停電の話は日本でもやっていましたが、
こういう話だったんですね〜。
当時の自分は関心が無かったんですが、
なんでも規制緩和規制緩和で営利企業に任せていると
いつかこうなるかもしれないという、
今後の日本でも起きそうな(一部既に起きている)話で、空恐ろしかったですわ。