このアルバムをクリスマスの時期にしか聞かないのはなんとももったいない話です。比較的ポピュラーな選曲ですが、演奏は他では決して聴くことの出来ない卓越した魅力を内在しており、上品で質の高いア・カペラのアルバムの誕生とも言えるでしょう。

北欧のコーラス特有の深い響きのお蔭でハーモニーの透明度が高く、濁りの少ないア・カペラが繰り広げられています。このＣＤは1997年から2003年にかけて収録された音源を編集したものです。そのお蔭で、独立のために退団したソプラノのマルガリータ・ヤルケーウスの美声をたっぷりと聴くことができたのは朗報と言えるでしょう。

通常英語で歌われる「きよしこの夜」も母国語のスウェーデン語で歌われると一味も二味も違って聞こえてきます。母国スウェーデンに伝わるクリスマス・ソングは珍しいものでしたが、敬虔な雰囲気が伝わってきましたし、愛らしく親しみやすい曲が多くて心地よいハーモニーに包まれました。

今や世界を代表するア・カペラ・グループになりましたが、ザ・リアル・グループが半年前に来日した時の公演は素晴らしいものでした。難しい曲も彼らにかかれば全て見事に歌い上げます。その魅力はライヴでの完璧な演奏の再現性にあると思います。真の実力がなければ発揮し得ないわけですので。
このＣＤでも「アメリカン・クリスマス・メドレー」を始め5曲がライヴ収録となっています。ハーモニーやリズムの乱れを微塵も感じさせないのが凄いですね。拍手も含めて臨場感たっぷりに聴くことができました。拍手！拍手！

クリスマスアルバムを聴くとそのアーティストの実力が分かる。誰もが知っているスタンダードを演奏して聴衆を満足させるためには確固たる力が必要だが、彼らはその水準を軽く超えて超絶とも言える領域にいる。クリスマスアルバムの金字塔とも言うべきシンガーズ・アンリミテッドの「Christmas」にも匹敵する素晴らしい作品だと思う。シンガーズ・アンリミテッドはスタジオアートで作品を昇華させたが、リアルグループは生でこのパフォーマンスを行うのだから恐れ入る。