これまで様々な人が太宰論を展開してきたようですが、
臨床医として活躍してきた筆者ならではの説得力のある説に
納得させられることが多数ありました。

筆者はＡＤＨＤやアスペルガー症候群という
これまで無かった視点で太宰の人物像を再構成すると同時に、
実際の太宰を知るキリスト者、故・菊田義孝氏との交流などから
太宰のキリスト教理解についても詳しく触れています。
一般の人のキリスト教理解や信仰とは異なる
ＡＤＨＤ・アスペルガーの人ならではの解釈や苦悩を推論したくだりは、
太宰の希死念慮に新しい解釈をもたらしたのではないかと思います。

これまで、太宰作品は苦手とするところでしたが、
あらためて、この説をふまえて読みなおしてみようと思いました。

これは太宰治とその文学の謎を、初めて解明してくれた画期的な本である。太宰文学に興味ある人、また、発達障害（ADHDで悩んでいる人にとって、必読の書だろう。今まで、これほど説得力のある太宰論に出会ったことはなかった。しかも、著者は、＜上から目線＞ではなく、太宰治の苦悩に深く寄り添って、この本を書いている。その優しい気持ちが伝わってきて、感動した。