「やさしさ」のにじみでた絵本作家をひとまとめに
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いわさきちひろ…なんとやさしい響きを持った名の絵本作家でしょう。子供たちがみなこのやさしさを身につければ、いさかいやねじれのない社会にはならないものをと思います。
さて、この本は「千の風になって」人々にやさしさをとどける「ちひろ世界」をひとまとめにしてくれた集約本で「ちひろの結晶」みたいな心のこもった本です。画家として、母として「ちひろのメモリー」がコンパクトにまとめられています。もちろん、その優しさの滲み出た絵の数々を適宜紹介しながら展開しています。
「こころのふるさと」は信州です。子どもの頃から親しんだ信州は、ちひろの原風景です。1997年には安曇野ちひろ美術館が開館しました。本書はその10周年記念に呼応しているようです。
1974年、55歳の若さで(肝臓癌のため)肉体は滅んでも、その絵は今なお多くの人々に親しまれ、数多くの人々に優しさをいつまでも風のよう送ってくれるにちがいありません。
私は私の絵本のなかで、いまの日本から失われているろいろなやさしさや、美しさを描こうと思っています(「人生手帳」1972年)この願いが今、最も必要とされることでしょう。なお、「やさしいけれど芯の強い人」だったという板倉明子の証言を見落とすわけにはいきません。