NHKのトップランナーにジャズバイオリニスト？として登場し、何気なく聞き流していました。通常は、本を読みながら、ラジオ代わりにテレビを付けていたため、画面はほとんど見ていないのでしたが、聞こえてきた音にびっくりして画面を見ました。
　「私の体と骨を通して足から地面を伝わり、観客の皆さんに音が響くように伝えている。」
　寺井さんの持ち味はバラードですが、なんといっても、トップランナーの番組中に本編5曲目の曲がかかり、どんどんとテンションが高まるにつれて、バイオリンの弦がはじけ飛び、振り乱してしかし音と魂は響くという感じでものすごい勢いと印象が残りました。バイオリンでジャズ？が弾けるのか！！というなんとも衝撃を感じました。クラッシックとカントリー（カモンアイリーンのような）くらいのイメージしかなかったバイオリン。衝撃でした。
　そんなこんなで、当時はまだネットが進んでいないかったので、雑誌やレコード店を探して、ＣＤアルバムを2枚見つけました。本アルバムと2枚目のアルバム。まずは、本アルバムを購入しました。朝、夜聞き、すっかり気に入りました。曲名は覚えないのですが、リズムとメロディーは頭の中をぐるぐると回り続けます。1曲目も有名なジャズの曲で、原曲も素晴らしいが、このアレンジもなかなかよい。これをきっかけにソニーＣＤ倶楽部のジャズ版を申し込みました。音楽の広さを感じたアルバムでした。

どれを買おうかと迷っている方にはオススメです。ジャケットは地味ですが(笑)中身は粒ぞろいです!

今はアイドル的な売れ方をしているような気がしなくもない寺井尚子。
このアルバムだけは唯一ほんとに純粋に良いJAZZアルバムを作ろうと
いう信念で奏でられているように思う。
バックアップミュージシャンも強烈なプレイで聴き手を引きずり込む。
本人作曲のものより、坂井紅介氏のオリジナルや野力奏一氏アレンジの
トラックの輝きは衝撃的。
個人的にベストトラックはM-5「パキラ」。

今でこそジャズヴァイオリストのトップランナーとして活躍されていますが、このデビューアルバムにたどり着くまで相当苦労をされていることは想像に難くありません。このアルバムでは、ラスト曲（ボーナストラック除く）の優しいバラードをはじめ、まるでこれが最初で最後のアルバムかもしれないと言わんばかりに彼女が全ての力を出しているように思えます。これ以降のアルバムはだんだん水を得た魚のように好作を連発して発表します。しかし、こういうひたむきなアルバムに惹かれるのは私だけではないと思います。バックの壮絶な演奏も然り。ジャズ向きと思われない曲もそれが彼女がどうしても残しておきたかったものと考えるとかえって愛着が生まれます。

これは発売されたのと同時に買ったアルバム。彼女のプレイを聴くのは始めてではなかったのですが、それでも随分とそのフレッシュなアプローチと、ヴァイオリンを鳴らしきる彼女の技量にあらためて驚いた記憶があります。またメンバーが素晴らしい。日野元彦さん、坂井紅介さんのリズム隊のシンプルで繊細なサポートがなんとも言えずクオリティが高く、野力奏一さんの美しいキーボードワークとアレンジが光る。そして何と言っても寺井尚子さんのヴァイオリンの音色が美しく繊細で、今まで全く聴いたことのないようなオリジナリティに驚いたものです。今聴いてもこれは傑作としか言いようがない素敵な作品。"出会い"、"HIGHWAY AT MIDNIGHT"や"THINKING OF YOU"の非常に彼女らしいロマンティックな曲の響きが素晴らしい。しかし何と言っても"ドナリー"の才能溢れるアプローチと鋭い感性に何度聴いても唸らされる。デビュー作とは思えないほど完成度が高い。また故日野元彦さんも参加したこのアルバムのフルメンバーでのライブを聴けたことも僕にとっては最高の想い出。