完全に復活した霧亥が自らの分身とも言える銃、重力子放射線
射出装置を手にした瞬間、彼の表情から伝わる行き場の無い憤怒と
銃の咆哮が、私達読者をも貫きます。
彼はあまりにも言葉を発しません。その怒りが何処へ向けられている
のか、私達には知る由もありません。
ですが、その怒りが逆に、読者を霧亥の持つ深い感情の底へ導くのです。
SF的な側面ばかりがフィーチャーされがちな本作ですが、感情を失った
主人公が垣間見せる怒りや苦悩、そして微かな安堵こそが、この作品の
魅力なのではないかと思っています。
九巻から新たに登場する同行者(?)とのやり取りから、彼の心をすく
い取ってみるのも良いかも知れません。
謎も少しずつ明かになってきて今が旬な作品です。