リラックスして楽しめる穏やかで美しいCDです
★★★★★
まず、ジャケットの安井さんが美しい。
前作My Willのジャケットは、安井さんの強い意志を感じさせる表情をとらえたものとは言え、ちょっと怖いと感じた人も多かったのでは?
今回は、美しい表情をとらえており、これならジャケ買いする人だっているかもしれない。
そして、ジャケ買いした人も、きっと内容にも十分満足できるはずです。
ヨーロピアンジャズトリオ等で成功しているM&Iの方針なのか、安井さんとしてはかなり抑制を効かせた、美しくリラックスして楽しめるアルバムを目指したものと思われます。
1曲目には、The Dolphinを持ってきた。これが穏やかで美しい。このほうが多くのCDファンに受けるかもしれない。2曲目も楽しいし、3曲目Left Aloneもサラリときれいに演奏して重たくない。現代ピアノトリオファン好みですね。
安井さんのオリジナル傑作であるTwilight Expressはやっと8曲目に登場。安井さんは強靭なタッチでパワフルかつ美しく、素晴らしく楽しい演奏にしてくれました。
本作は、初のニューヨーク録音ということで話題性は十分で、SJ誌ゴールドディスクとなりましたが、このベースとドラムスはテクニック的には十分と思われるものの、ちょっとベースの録音レベルが小さすぎるのでは?ドラムスも軽快さが目立ち過ぎる傾向があるような気がします。でも、このほうがセールス的には良いのかも。
ライブでのたとえば佐瀬正b、ジーン重村dsのような、ガッツがあり、絶対に楽しくならざるを得ない強靭なリズム隊を得て、イケイケにもっとガンガン弾きまくる安井さんの演奏も聴いてみたかったようにも思います。
しかし、そのような演奏はライブに行けば十分に堪能できますし、このCDは、いつでもどこでも穏やかに楽しめる美しい録音と言えるでしょう。
万人にお薦めできるピアノトリオ作品であることは間違いありません。
以前の2枚よりいい
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3枚目のアルバムともなると、肩の力が抜け、しかし手抜きはせずに、いいアルバムに仕上がっている。いささか「手垢のついた」というか「超有名曲」のレフト・アローンやラブ・フォー・セールをどう料理するのかと思ったら、スローでしかも陰々滅々としないさわやかな「安井ワールド」風に料理。安井のタッチに爽やかさが加わった。オリジナル曲の美しさも相変わらずだが、特筆大書したいのはオリジナル曲「トワイライト・エクスプレス」の疾走感とメロディの美しさだ。デイビット・ウィリアムズのベース、ニール・スミスのドラムに負けていない力強さも魅力的。「力強くて、なお爽やか」という、相反しそうな魅力が安井に加わった。これは、プロデューサーのセンスがいいからだろう。ニューヨーク録音は大成功。いまや日本を代表するピアニストと言ってよいだろう。(松本敏之)