70年代スティービーのスタート点となった瑞々しくもシリアスな大傑作
★★★★★
子供頃、スティービーを聞き始めたときは、72年の「トーキング・ブック」からの3部作、みたいな括られ方がよくされていて、自分もそんな先入観を持っていた。
しかし、素直に音楽に耳を傾ければ、スティービー・ワンダーの真の誕生となるべきアルバムは、本作をもってすべきだろう。
全曲シリータ・ライトとの共演で、歌詞、曲調、演奏からジャケット・デザインまで、すべてにわたって前作「涙をとどけて」から飛躍的に進歩している。わずか一年にも満たない間で、これほど成長したアーティストも珍しいのではないか?
個人的には、本作から「キー・オブ・ライフ」までを、「六部作」と位置づけたい。
コミカルな「打ち明けたい」以外はどれも心に染みる好きな曲ばかりだが、特に「夏に消えた恋」の儚い美しさ、「キー・オブ・ライフ」の何曲かみたいにグッと盛り上がっていく「瞳の中の太陽」にはいつも心打たれる。
もし、昔の私みたいに、「トーキング・ブック」以降のスティービーしか聴いたことのない人は、是非、本作と次の「心の詩」も手にとってみてください。