中国文明の性格と日本にとっての意味
★★★★☆
講談社による中国史新シリーズも、第11回配本の本書をもってついに完結を見ることとなりました。本シリーズ、新進気鋭の若手研究者や文化史系の専門家も交えた個性的なラインナップが、それぞれの持ち味を十分に活かして執筆を分担しており、たいへん野心的な取組みだったと思います。全ての巻が100パーセントの成功を収めているとは言えないかも知れませんが、本シリーズのユニークな編集方針は壮とすべきであり、全体として水準に達していると思います。
さて、本巻ですが、このシリーズの掉尾を飾るに相応しく、中国史の各分野を代表する専門家6名が、中国文明の性格論的な捉え方や、日本にとっての中国の意味合いなどを縦横に論じるものです。そうした本巻の性格上、中には随筆チックに流れている部分もありますが、それはそれで読み易くもあり、肩肘が張らなくて宜しいのではないかと思います。
内容的には、文明と自然環境の関係や、家族制度などの社会風習と人々の歴史意識との関係を論じる部分に特に興味を覚えました。中国と言えば、さまざまな面で巨大な国です。この国の成り立ちや歩みを深く理解しようと思えば、やはり学際的なアプローチが不可欠になることを改めて認識しました。
歴史の勉強というと、えてしてクロノロジー的なフォローに終始してしまいがちですが、本巻のような、通史理解の背景となるべき部分にもしっかり注目すべきなのだろうと思いました。そうした意味で、中国史ファンの方々には一読をおススメしたい一冊です。