分かりやすく書かれた本です
★★★★☆
河東泰之先生もの授業関係のファイルで推薦しています。
図書館で見つけた古い本ですが、レイアウトが読みやすく良い。内容もやさしく書かれていて
関数解析の入門書としてお薦めです。まず「アインシュタインとファインマンの理論を学ぶ本」竹内薫を先に読んで。
微分方程式や積分方程式の話題は笠原先生や志賀先生の本で補充したら良いと思います。非可換な代数を表現する理論は「行列」の理論(線形代数)である。これを無限次元の拡張したのが関数解析である。「関数解析とは無限次元の線形代数である」 吉田耕作先生のお言葉です。関数解析とはおおまかに言えば、線形代数(行列の固有値、固有ベクトル、正規直交化、写像など)の話を実数や複素数の代わりに関数でもやってみようということです。線形空間に位相を導入する理由は、連続性の議論(収束の概念)を行いたいからで、特にBanach空間やHilbert空間のような無限次元空間において必要不可欠だからである。加法と乗法(和とスカラ倍)という二つの算法の代数的構造に解析的(距離と収束の位相)概念を導入して考察するのが関数解析。ノルムを使って位相的諸概念(点列の収束、極限、閉集合、開集合)を議論する。
2次元平面や3次元空間のベクトルの長さを抽象化してノルムの概念が生まれた。ノルム空間というだけでは、解析学の基本である極限操作はできないので、空間がその操作に閉じている必要がある、これが完備性(コーシー列が収束)という性質で、それを満たすベクトル空間をBanach空間という。そのなかでも、内積が誘導されたノルムを持つのがHilbert空間である。あらためて内積が定義されているベクトル空間を内積空間(または計量ベクトル空間)ということにする。内積空間では正規直交基底やシュミットの正規直交化法など直交補空間、直和分解など論じられる。距離の概念を入れることによってはじめて2点の距離を測る数直線や実数列でやった収束の位相的解析的概念を論じることができる。Hilbert空間が有限次元のとき、線形作用素は行列で表現できる。したがってHilbert空間上の線形作用素の理論は無限次元の行列論と見ることが出来る。線形空間の基底概念とは任意のベクトルを有限個の基底ベクトルの線形結合で表わせるものはいつでも存在するということ。線形代数でベクトルを成分表示すると、直交基底ベクトルで表わされるが、関数空間でも完全正規直交系ができ、関数の成分表示が可能となる。その具体的な、イメージが「フーリエ展開」である。内積空間が完備性を持つとき、「ヒルベルト空間」(これのわかりやすい説明は「道具としての物理数学」226頁)という、一方ノルム空間が完備性を持つとき、「バナッハ空間」という。 なお、内積については遠山啓エッセンス〈3〉量の理論がメチャ分かり易いですよ。
連続、不連続を問わずあらゆる関数をサインとコサインで表現できるフーリエ級数。それを無限区間に拡張するのがフーリエ変換という。スペクトルとは「固有値全体の集合」という意味の言葉です。 関数解析から量子物理学へとつながる新井 朝雄の名著「 ヒルベルト空間と量子力学」とつなげて行ければ良いのでは。
関数解析の初歩を丁寧に解説
★★★★★
関数解析の基本的な話題に的を絞り丁寧に解説しています。
初学者への配慮が至る所に行き届いており、関数解析事始に最適です。例えば本来なら関数解析以前に学ぶべきフーリエ解析の説明のために章を設けていたり、具体例を提供する目的でソボレフ空間(偏微分方程式の舞台です)を導入したり。こういった関数解析に関連した基本的な話題が同時に習得出来るのは有難いことです。いずれも基本事項のみを扱い、ゆっくり丁寧に記述されています。
従って本書で関数解析のいろはを学ぶことが出来るでしょう。スペクトル分解定理ではリーマン積分による方法が取られておりスペクトル測度の観点からは一般性に欠けますが、自己共役作用素のスペクトル分解が本書の目的ですから連続関数のみ扱えれば十分、つまりリーマン積分で十分です。この辺りにも初学者への考慮が伺われます。名著に相応しい大変素晴らしい構成です。
本書終了後は例えばRUDINを通読されるとよいでしょう。岩波の関数解析もおススメです。
証明が丁寧
★★★★★
この本は証明が丁寧で、ルベーグ積分をある程度学んだ人なら一人で読み進めることができるだろうと思います。邦書には珍しく、非有界自己共役作用素のスペクトル分解定理の証明まで載っていますが、どうしてもルベーグ・スチルチェス積分の知識は必要になるでしょう。また、私が読んだところでは、リゾルベントのスペクトル分解定理の証明で、重要なところが抜けているように思います。ですが、それでも星5つにしたくなる良書です。
関数解析の良書
★★★★★
この本は、座右の本とするにふさわしい。何でも書いてある。とくに、関数解析を微分方程式に応用する場合、具体例が分かりやすく、参考になる。