著名なスペイン史上の人物をエル・シドからガウディまで取り上げていますが、それぞれの人生を生まれから死まで満遍なく取り上げるというよりは、著者自身が「ここだ」と思い入れの強い部分のみ深く切り出しています。その切り出し方がかなり"個性的"な気がしました。
例えばガウディは市電にはねられて事故死する場面を微に入り細を穿った記述で描いています。しかしそのことによって、かの個性的な建築家の「表現者」としての苦闘といった点にまでは、限られた紙幅の中では迫りきれなくなってしまったうらみがあります。
聖職者ラス・カサスの物語も論敵セプルベダとの論戦の核の部分には迫っていますが、彼の論戦後の末路については意外とあっさりと扱われていて、食い足りないという思いが残りました。
表題から多くの読者が期待するのは各人物の人生の概要であると思いますが、著者がスポットを当てる場所が特異であるがために、人物のおおまかな全体像をつかむことが難しくなっています。