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23分間の奇跡 (集英社文庫)

価格: ¥518
カテゴリ: 文庫
ブランド: 集英社
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23分間の奇跡 (集英社文庫) [文庫] [Jul 20, 1988] ジェームズ・クラベル; 青島 幸男
23分間の奇跡 (集英社文庫) [文庫] [Jul 20, 1988] ジェームズ・クラベル; 青島 幸男
恐ろしい本?<最初の授業> ★★★★★
「これは恐ろしい本です。
 まずタイトルを読んで「?」となりますが、
 読み終わってみると「ズ−ン」と腹に響いてくるような恐ろしさがあります。」
こんな紹介文が目にとまり、少し古いが手にした。
 (『世界史読書案内』津野田興一/岩波ジュニア新書)

戦争に敗れ占領されたどこかの国のある学校の教室に、
新任の若い女性教師がやってくる。
初めは恐怖や反発、警戒心を抱いていた生徒たちが、
暴力も脅迫もなくすっかり考えが変わってしまう過程が描かれる。
午前9時からわずか23分間の出来事である。

作中では、物語の舞台となっている国の国名はもとより、
政治や教育がどのようなものなのか、
海の向うからやってきた占領者とどう対立していたのかという背景、
また新任教師の人物の名前などについては一切書かれていない。

ただ、著者が、第二次世界大戦の時、
イギリス海軍将校としてジャワ島で日本軍の捕虜となり、
シンガポ−ルの収容所で終戦を迎えた体験を持っていること、
戦後は映画界に入り、アメリカに帰化する。
さらには、作品の誕生の直接的なきっかけが、
彼の娘が米国の小学校に最初に登校し、
初めての授業を受けたときの娘の言葉に触発されたなど、
こうしたことをつなぎあわせると、それなりのイメ−ジが湧いてくる。

訳者は、そのあとがきで、
日本にも似たようなことがあったと、
戦後の日本と米国(進駐軍)との様子と重ね合わせている。
また訳者が指摘するように、物語の状況設定からいえば、
アルザスを舞台にフランスがプロイセン(ドイツ)に敗北したときのことを描いた
アルフォンス・ド−デの短編<最後の授業>と対になる続編、
いわば<最初の授業>ともいえる作品である。

いずれにしても、自由とは何か、教育とは何か、
読者にずしりと問題提起する一冊である。
今こそ読んでおくと良い ★★★★★
この本に出会ったのは,もう20年も前のことですが,今こそ読んでおくと良い本だと思います。

「自分の意見を持つこと」がやたらと強調される風潮ですが,その「自分の意見」というものは何なのか,どこから来たものか,ちゃんと意識しないと,簡単に都合よく利用される危険があります。若い方も,大人も,それはおなじです。
関係ないのかもしれませんが,つい先日の選挙結果を見ても心配になります。

この本自体はごく短いもので,すぐに読み切れます。ぜひ読んで下さい。
マインド・コントロールの恐怖 ★★★★★
"But we don't need a sign to remind us that we love our country,do we?
You're all good boys and girls. Do you need a sign to remind you?"


非常に有名な、傑作短編。
御存知の方も多いかとは思いますが、未読の方は是非ご一読をば。


1つの国が敗れ、敵国に占領され、戦勝国から新しい先生が教室にやってきます。
その若く美しい女の先生は、実に巧妙に、
子供達をマインド・コントロールしていきます。

冒頭に掲げたセリフは、
「国家の象徴たる国旗に忠誠を誓う」という、いつも授業の前に行っていた儀式に対し、
先生が「そんなことする必要あるかしら?」と疑問を投げかけたものです。

この後、先生は、頗る巧みに子供たちの心を誘導し、彼らから国旗を奪います。
更には信仰を奪い、自由を奪います。
そして敗戦国の子供たちは、先生のマインド・コントロールによって、
敵国への怒りや恐れを捨て、占領国の忠実な僕へと変わっていくのです……
荒っぽい力ずくの洗脳ではないだけに、かえって凄みがあります。
(なお洗脳とマインド・コントロールとの違いは、洗脳が拷問・監禁や薬物投与といった強制力を伴うのに対し、マインド・コントロールは被害者が物理的な強制力を自覚する事が無い点にあります。)


この短編が、アルフォンス・ドーデの名短編『最後の授業』のパロディであることは明らかです。
『最後の授業』は、これまた非常に有名ですが、
普仏戦争に敗れたフランスがドイツに割譲したアルザス・ロレーヌ地方を舞台にしたものです。
ドイツに引き渡される直前、学校で"最後のフランス語の授業"を行い、
授業の終わりに生徒たちが「フランス万歳!」と叫ぶ感動的なお話です。


『23分間の奇跡』では、これとは逆に、
「最初の授業」によって、
敗戦国の人々は占領国に魂を売り渡してしまうわけです。

しかし、我々日本人にとって、より興味深いのは、
この物語の構図がポツダム宣言受諾(降伏)後の日本とまるで一緒である点でしょう。
GHQは情報統制に基づく世論誘導によって、
恐るべき巧みさで日本国民をマインド・コントロールしました。
日本は全て間違っていた、アメリカが全て正しかった、と。


いわゆる「日の丸・君が代」論争も、
『23分間の奇跡』の観点から考え直す必要もあるのではないでしょうか?
洗脳 ★★★★★
 面白い.さらっと読める分量なのに,話をあえて分かりにくくしている所が良い.
 古いタイプの,型にはまった古い先生に取って代わる若くて魅力的な女の先生.彼女は子供達の様々な問いかけに誠実に答え,今まで疑問を許さなかった習慣にあえて疑問を抱かせる.斬新な方法で子供たちを啓蒙した素晴しい先生かと思わせておきながら,ラストでそれは覆される.
 これがアメリカの作家の書いた作品ならばきっと二人の先生を入れ替えて登場させただろう.その方が話がわかりやすいし.極めてハリウッド的な凡作となったことだろう.
やさしく見えてかなり難しい物語 ★★★★☆
 青島幸男氏も訳者あとがきで指摘しているように、恐らく、この物語は、子供が教
育によって簡単に洗脳されてしまうことの恐怖を述べているのと同時に、型にはまっ
た古い教育に対する批判的視点を含んでいると思いました。
 作者のあとがきを読むと、作者が物語を書いたのは、忠誠を誓うことの意味も教え
ずにフレーズだけ暗誦させられた娘の体験がきっかけとなっているとのことです。

 でも、この2つのテーマがなんとなくわかりにくい感じで書かれています。

 新しい先生の言っていることは、「制服」の話と、「わたしたちの指導者」の話以
外はほとんど、古い先生より教育としてより好ましいように思えます。一人一人の子
供たちの名前をちゃんと覚えるか否か、形式的に「忠誠を誓う」フレーズを覚えるだ
けか、その意味を考えさせるか、神に祈るということを疑ってみるか、それを許さな
いか、子供の質問に対して誠実に向き合って答えるかどうか...。作者の後書きを読
み、作者の願う教育を体現してるのは基本的に新しい先生(全体主義的なところは除
く)に思えました。それに、子供たちに健全な批判精神が育つのは、新しい先生の教
育においてではないでしょうか。

 でも、洗脳として扱われているのは...。

 もし、新しい先生のような教育をしていたところに、古い先生のような人がやって
きて23分間で子供を洗脳したなら、わかりやすかったと思いますが、逆の構成になっ
ているために、ともすると、新しい先生の教育が悪いもののように読み違われる可能
性もあるのかもしれません。

 なんだか、この小説は、かなり難しい構成になっていると思いました。

 作者が、わざと新しい先生と古い先生の教育内容を入れ換えた理由はなんなのでし
ょうか?洗脳の巧妙さを表現するために部分的に妥協してこういう構成にしたのか、
どんな教育理念も常に個々が自ら考え直していくべきだということなのか、作家とし
ての遊びなのか...。