インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生

価格: ¥7,140
カテゴリ: 単行本
ブランド: 柏書房
Amazon.co.jpで確認
つながりを取り戻せるのだろうか ★★★★☆
 第一印象は,でかっ,というもの。膨大な注もある。ただし,章の構成は非常に構造化されていて,また1章あたりはそれほど厚くないので,着実に読み進めることができる。図表も多く,わかりやすくする工夫がなされている。

 社会関係資本が,アメリカ社会においてどのように衰退しているのか,社会関係資本とはどのように形成され,どのような影響をもつのか。膨大な資料を踏まえて,解説がなされている。アメリカは自発的結社が活発と聞いていたし,実際他国と比較するとそうなのだが,その活動はどんどん縮小しているようだ。それにあわせて,多くの悪影響が生まれてきている。

 それにしても社会関係資本はどのように築かれるのだろうか。個人の特性ではなく,コミュニティの文化や社会状況といったものと複雑に絡み合っているが,目には見えないものだけに,なかなかとらえどころがない。その処方箋があれば,再生への道筋も見えてくるが,それはこれからの課題なのだろう。副題に「再生」とあるが,最後まで読んでも「再生」できるかはあやしい気がした。少なくとも,簡単なことではなかろう。

 面白い議論であるが,やはり6800円は高く,もう少し安ければ広く読まれるのに,と思う。原著のペーパーバックはリーズナブル(14ドルくらい)であり,英語に自信があればそちらで読めばいいかもしれない。
膨大なデータ量に圧倒される ★★★★☆
社会関係資本で有名なパットナムの著書。

膨大な統計データをバックに人びとのつながりの変化とそれによる影響に
ついて述べている。純粋な学術書とは違い一般の読者も想定して書かれて
いるため、アカデミックな関心にとどまらず、「いかに社会関係資本を築
いていくか」という実践的な提案も行ない、グランドデザインを示している。

内容は大きく分けて4つに分けることができる。
1.組織への参加、インフォーマルなつながりが減少(=社会関係資本の衰退)
  …よく人びとのつながりはどんどんと希薄化してきているという話を
   聞くが、それを実証的に示そうとしている。各種社会調査などを利
   用して、20世紀の潮流という大きなくくりで論じている。
2.社会関係資本が衰退した要因
  …上記1がなぜ生じたのか、様々な要因から探っている。もっとも大き
   いのは世代変化による影響、次はテレビ、それ以外に女性の社会進出、
   郊外人口の増加などが挙げられている。
3.社会関係資本がもつ効果
  …社会関係資本が「資本」である所以はまさに価値を生むためである。
   この効果を教育や健康、経済、政治などとの関わりで述べている。
   州ごとに社会関係資本指数を算出し、分析を行なっている。
4.社会関係資本の蓄積のために
  …アメリカ社会での社会関係資本が衰退しているならば、どうやってそ
   れを食い止め、社会関係資本の再生へと向かえるのか。細かな内容に
   ついて述べてはいないがグランドデザインの提言を行なう。

個人的な見解として必ずしも著者の意見に賛成できるわけではなかったが、
膨大なデータを集め、様々な場における人びとのつながりが希薄化している
ことを実証的に示そうとしたことは素晴らしいの一言。データの量には圧倒
される。
人びとのつながりの変化については社会学者が主に研究を行なっているが、
人びとのつながりが希薄化しているという論者もいれば、他の形態へと変わ
っただけで希薄化しているとはいえないという論者もいる。パットナムは前
者の立場にたっている。ここまでマクロな単位と長い時間軸でつながりの希
薄化について触れたものは従来なかった。そのため、本書の貢献は非常に大
きい。

ただし、社会関係資本衰退の理由として「テレビ」を挙げているのが腑に落
ちなかった。訳者あとがきをみてみると、本書執筆前はよりテレビの影響を
大きく見積もっていたそうである。他の要因と比べて違和感もある。
また、社会関係資本とはいかなるものかという点について述べられているも
のの、つかみどころのない話のような印象を受けた。おそらく、読者層を想
定して、社会関係資本についての学術的な議論を意図的にしていないからだ
と思われる。そのため、同じ「社会関係資本」という語で述べられながらも、
パットナムとは異なるとらえ方(あるいは焦点のあて方)をしている論者と
の立ち位置の違いがわかりづらかった。
上記の点が主に気になったところである。しかし、方々からの批判を受けた
後に、それを実証的に反駁していこうとして本書は書かれているので、かな
りのないものねだりであることは確かだ。

最後に、700ページちかい本書を読んでられないという人は、
○宮川・大守編,2004,『ソーシャルキャピタル――現代経済社会のガバナ
 ンスの基礎』東洋経済新報社.
の中に本書のもととなった論文が載ってあるので参考にするといいかもしれ
ない。この論文へ「実証的でない」という批判があったことから、『孤独な
ボウリング』を執筆したらしい。
また、社会関係資本論については
○リン,2008,『ソーシャル・キャピタル――社会構造と行為の理論』ミネ
 ルヴァ書房.(筒井他訳)
が詳しい。パットナムを含めた社会関係資本論者たちの話をまとめて、相違
点や位置付けなどが解説されている。最近翻訳されたので、読んでみるとい
いかもしれない。
アメリカは日本の鏡ということを実感 ★★★★★
 厚さ5センチの分厚い本だ。さまざまな統計資料から、アメリカ人が社会活動しなくなっている実態を浮かび上がらせ原因を追究している。まだ半分しか読んでいないので、後半のその対策、「何がなされるべきか?」というテーマに対してはまた後で論評するつもりだ。
 選挙の投票行為にたいして、宗教団体の働きかけが一番多いなどというところなど、日本の現状に近いと思われることが多々出てくる。そして何よりも説得力があるのはデータから結論を導いていくという姿勢だ。ひとつの仮説をさまざまなデータによって検証していく。
 日本の町内会や自治会といったものを、この本のコミュニティに置き換えるとまさにそうだという感を持つ。経済的逼迫さが原因のひとつであるということは間違いない。子供に対する犯罪もコミュニティの崩壊と無縁ではないだろう。
 とにかく、あらためて自分の身辺を見つめなおす機会をつくってくれた。すごいと思う本のひとつだ。