確かに「ワイルドサイドを歩け」「ヴィシャス」「サテライト・オブ・ラブ」「パーフェクト・デイ」といったキラー・チューンを並べられると「参りました」という他ない。
でも、このアルバムを聴いてルー・リードを分かったつもりになってはいけない。本物はもっとむき出しで、骨太でごつごつしていて、メロディ無視で詩の朗読かつ音痴で、装飾を削ぎ落とした音で勝負、の人なのだ。ではこのアルバムの聴き所は一体どこかというと、正にプロデュースを担当したボウイによる「お化粧」の部分である。
そのことが一番よく分かるのは4曲目で、いかにも地味で穴埋めっぽい曲なのに、取ってつけたかのようなクールなリズム・パターンと豪奢なバック・コーラスによって、非常にグルーヴィーなトラックに仕上げられている。今聴いても十分通用する、ウネリ系の腰にくるグルーヴである。
ホント、プロデューサーとしてのボウイの耳のよさ、センスの確かさに今更ながら脱帽(イギー・ポップの「ラスト・フォー・ライフ」でも十分スゴイと思ったのだけれど)。ただし、ルー・リードの神髄はここにはないので、入門者はベスト盤から入っていく方がいいでしょう(名曲「レジェンダリー・ハーツ」の入っているヤツがオススメ)。