小売業のあるべき姿を語る
★★★★☆
カテゴリーマネジメントのノウハウ本かと思いきや、具体的な手法はごくわずか。カテゴリーマネジメントの基本的概念とその必要性の主張が本書の論旨となっています。
カテゴリーマネジメントそのものを論じた第1部も面白いのですが、個人的にはむしろ、カテゴリーマネジメントの必要性を訴えるために著者が論じた、日本独特の取引慣行の歴史的経緯や欧米との比較のほうが面白かったです。
日本の小売業、卸、メーカーが安定的な消費拡大のなかで売上至上主義によって利益を稼いできたことを指摘。その環境が大きく変化してしまった今こそ、「消費者起点の経営」に立ち返るべきとの主張します。
本書が書かれたのは3年以上前。あれから日本の流通企業も大きく変革を遂げつつありますが、本書の内容は決して古いとは感じません。
小売業とは何か、また、卸、メーカーはいかに小売業と付き合うべきか、という本質を学べる好著です。
発想の転換としてのカテゴリーマネージメント
★★★★★
現在の日本の小売業界は、価格競争一辺倒による体力消耗に陥っているだけでなく、結果的に消費者ニーズに反する魅力に乏しい同質的な売り場を提供している。これは、90年代のアメリカの小売業界が直面した状況と同じであり、それを救ったカテゴリーマネージメントという管理手法を本書では紹介している。日本では従来、商品の棚割的な発想でしかカテゴリーマネージメントを捉えていない向きがあるが、真意は、消費者のニーズを起点とし、製配販協働の上に成り立ち、カテゴリーを最小のビジネスユニットとしてポートフォリオ管理する事にあると説いている。大型外資が日本に次々参入を果たし、競争が激化する小売業界。これから必要になる発想の転換について、一貫して日本の流通構造を研究分野としてきた著者が、現状における問題点を絡めて具体的に指し示している良書。