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“はかる”科学―計・測・量・謀…はかるをめぐる12話 (中公新書)

価格: ¥924
カテゴリ: 新書
ブランド: 中央公論新社
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“はかる行為”がもたらす広がりと奥行き ★★★★★
本書は、“はかる行為”のさまざまな側面を考察していて興味尽きない。個人的には、第1章「はかることの革命」と、第12章「メタファーで世界を推しはかる」が特に印象に残った。

第1章(担当:坂上孝)は、メートル法の成立の歴史的経緯を概観し、メートル法が、はかる対象の属性から独立し、純粋に抽象的な量として定義された画期的な度量衡であったことを解説する。長さの単位を地球の大きさから割り出し、10進法で長さ・体積・質量を体系づけたことで、世界を共通の指標ではかり、客観的なデータとして誰でも自在に活用できるようになったことの意義を知ることができる。

第12章(担当:柳谷啓子)は、”何らかのモノサシを当ててある事象をはかる行為”と、”ある事象にメタファーを当てはめる行為”が近似しており、根底において同じ認知プロセスなのではないか、と指摘する。柳谷論文を読んで、メタファーは、「量」を「質」に置き換える行為、という観点に思い至った。本書の内容に則して言えば、メタファーは、「量」を測定する「数」の内側にある「質」そのものを浮かび上がらせようとする試みともいえる。

全体として、“はかる行為”」の幅の広さを実感させてくれる。本書の続編として、たとえば、「時間をはかる(人類は時間をどのように把握してきたか)」、「心理の健全度をはかる(健常と病理をわけるものは何か)」、「幸福度をはかる(ブータンの国民総幸福量GNHの試み)」といったテーマが取り上げられれば、「はかる行為」の一層の広がりと奥行きを理解できるようになるのではないだろうか。
物事の「質」を計るのは難しい ★★★★☆
最初の4章までは哲学的で退屈でしたが、古代シュメールの土地測量から11章までは面白く読めました。タイトルと違い、本書は理系の本ではありません。文系の方々がいかに定量(数値化)に苦慮されているのかも理解できました。
美しさや罪の重さなど、どだい無理なものを計ろうとする行きつ戻りつの思考は、当人はともかくとして、読んでいるだけの人間には面白く思えました。
またメートルが定着するまでの政治的・経済的な紆余曲折も、現代の感覚なら笑えます。
でも物事の「質」を計ることの難しさを教えてくれる本です。
<はかる>を啓蒙する ★★★★★
すでにいくつかの新刊紹介や書評が出ているので、内容の概略をご存知の方も多いであろう。
<はかる>という認識の補助的行為が定着した歴史は、人類の歴史ほど古くはない。世界標準的なメートル法が成立したのは2百年程度で、社会的に普及するの如何に大変なことかは、アメリカでは平然とメートル法が定着せずにフィートが日常的に使われ、その延長にマイルがあるのを思い起こせば、1840年頃に一応の認知を得たメートル法がフランス国内で使われだすのにさらに時間を要したことは想像に難くない。これは日本でも同じで、戦後メートル法が定着しだすの1960年代以降でそれまでは、尺貫法が地方では幅を利かせていた。普及速度が上がったのは、おそらく教育の力が大きい。だが、メートル法宗主国フランスでは、同じ単位でも地域どころか集落ごとにすら同じ名称の単位の量がまったく異なっていたというから恐れ入る。これも地方自治のノウハウとして栄えたらしい。革命が起こるはずである。
その経緯を概略だが精緻にして簡略に記述した編集者阪上さんの第1章は実に説得力をもって次章以下を牽引する。以下11章で日常的な<はかる>諸概念や単位を最新の研究成果からエスキスを抽出している。もの的世界観を反映したキログラムの再定義やGISの考古学への応用など先端的報告から、風水ではかる、人間行動をアフォーダンスではかる、など実に多彩な内容。
佐々木正人さんのアフォーダンス紹介は短いが、第一人者だけに的確な説明で精緻。生物としての人間が如何に外部を認知するかを実に手際よくまとめている。その実証的研究の根気と実践は、外部外部を如何に内部観測変換するかを解説しており、郡司ペギオ幸夫の研究を補足する。オートポイエシスの自家撞着をもの的に脱却かつ自立する方途暗示している。
他にも面白い<はかる>が扱われている。対象は美、罪、音、空間(ル・コルビジュ)、土地、穀物、メタファーなど以外に知られていない面を顕在させており、楽しめる。幅広い読者に読まれんことを願う。
本書は新書版だが、本版以外に2冊の単行本版と1章ごとの独立報告書も実は存在する。
さまざまな「はかる」を科学する ★★★★☆
 さまざまな分野の専門家が「はかる」行為を科学した全12章からなる新書。
 重さや環境、国土といった比較的身近な「はかる」から、音、美意識、罪や認知意識といったものまで内容は多岐にわたる。
 読者の興味次第だが、個人的には第2章、「重さ」をはかるが秀逸。重さの基準となる「キログラム原器」をいかに精密に作製することができるか。原子レベルでの操作を駆使した研究が圧巻。究極の「モノづくり」だ。