言の葉の舞い散る幻想の世界
★★★★★
山田正紀氏の作品にはいろいろな雰囲気の作品があるが、これほど美しい物語に出会ったのは初めてだ。
8歳の少女リアとアンティーク・ドール「オフェーリア」に導かれて作品の中に入り込めば、そこは「影歩異界(かげあゆむいかい)」と呼ばれる言の葉にあふれた幻想の世界。そこに存在するすべてのものに美しい名前がつけられていて、山田氏が造語の天才であることを改めて認識する。読み手はオフェーリアとともにどこまでも時を遡り、月夜に舞う。
人間の心と人形の「心もどき」が同じ「魂蟲(たまむし)」が宿ることによって生まれるというのも、何とも素敵な設定である。
難があるとすれば、ショッキングピンクを基調としたカバー。もうちょっと何とかならなかったのだろうか。