そんな時代に生きた、一組の若い夫婦の物語。
子どもに恵まれない焦りと空虚感。人としての矜持を忘れた意地汚い連中のおせっかい。いろんなものに足をひっぱられて、正しいと思う道が歩めないもどかしさ。とことん痛めつけられた挙句、真砂屋お峰が思い立ったことは・・・。
江戸の火事やら衣装比べやら、大輪の花火のような豪華絢爛な描写も魅力的ですが、終章近くの夫婦ふたりの花見のシーンが何より心にしみます。甘くて、はかなくて、静かで、満ち足りて。豪華の乱打に耳が破れてはじめて聞くことができるあたたかな静寂。読書でこれが味わえるなんて、至福です。
隠れた所に金をかける、地味に見せて実は凄く贅沢にしつらえてある、など、江戸小紋や、関西と反対の関東、というか江戸の風潮は、実は「お上の『町民の贅沢禁止令』から来たんだなぁ、とか、そういうことも書いてありますよ