貫禄と踊りの腕を身につけた秋子が家元となることを宣言し、氾濫分子は分派・分家として切り捨てることで流派の存続は確立した。
が、秋子が次の家元にと心をかけていた夫の愛人・梅弥の子供は死産する。
才と美貌に恵まれながら、短絡のために成功を掴めない妹が痛々しい。
苦労と努力の果てにようやく自らの地位を確立した姉の行く先にも、黒々とした不安が渦巻いている。
作中の流派では猿、ついで雪、月、花が「特別な名前」となっている。「香華」「芝桜」などで主人公の店の名前などで登場した「花」がここにも見える。
芸妓の名前の「梅」の字も、他の作品との共通項。著者にとって「特別な名前」なのだろう。