一巻の巻末で
★★★☆☆
「死体を描くことは直接の目的ではない。ただ、死体が死体として存在する世界を
まず構築しなければ、私は私が意図する事を表現できない」と大塚さんが仰っていますが、
この巻辺りからどうもその宣言が信じられなくなりました。
この作品の"世界"は、ちりぢりに拡大していくばかりですが、ページを開けば死体、死体、死体。
そして、その死体になった人はごく一部の主要人物を除いて二度と描かれる事はありません。
「死体が死体として存在する世界」は、構築できたのでしょうか。
せいぜい、「死体がいっぱい出てきて、いけない本を読んでるみたいでなんだかドキドキしちゃう世界」くらいではないでしょうか。
大塚さんが表現しようと宣言した「記号でない身体」は、この作品で描かれているのか疑問です。
ただし、読んですぐ忘れちゃうような漫画だったらいちいちこんな野暮な茶々を思いつきもしないでしょう。
物語が破綻しそうでも、永遠にループしていても、なにかこの作品にはぐっと心を掴まれていると思います。