アイルランド出身の英語の教師・ノートンや、よろず屋(画家は、その離れに住んでいる)のばあちゃんの孫の小学生・チサノ、よろず屋で飼っている猫のミーコ。彼らと画家の「ぼく」との心が触れ合う様子は、見ていてあたたかなぬくもりを感じました。ふわっと心がなごむような会話なんだけれど、そこには時折くすりとさせられるとぼけたおかしみもあります。なかでも、「ぼく」とノートンが交わすやり取りに、生命の不思議へと思いを誘われてしみじみとさせられました。
ほのぼのとした、やわらかなファンタジーの香りがする作品の空気は、どこか、梨木香歩さんの『家守綺譚』に似ている気がします。そして、丸山薫の「汽車にのつて」という詩の一節が語りかけてくるようにも思いました。<< 日が照りながら雨のふる あいるらんどのやうな田舎へ行かう >>と。