百花繚乱!まばゆい花を咲かす鎌倉仏教
★★★★☆
貴族から武士に世の中の主役が移った鎌倉期、激しい仏教改革の機運が巻き起こった。武士や庶民の願いや祈りに対応し、個人の救済が求められるようになったのだ。
本書はそのパノラマ的構図を明瞭に論じる。鎌倉仏教の基本的課題を確認した後、「南都」「真言密教」「北嶺」「禅」「念仏」「日蓮」の6項によって、それぞれの特性と全体的共通性を明らかにし、当時の文化・思想的状況を示す。
それは古代以来、大陸から伝来した仏教思想を大胆に日本的に換骨奪胎、咀嚼しようとする最大の運動の一つであるといえる。また、それは日本ののみならず世界仏教史においても特筆してもよいレベルのものであるし、さらにいえば宗教改革やルネサンス、諸子百家思想とも比較することができるものだ。
本書はコンパクトながら、その豊饒な知的思索を味わえる密度の濃いつくりである。