重い「原石」
★★★☆☆
カーヴァーさんの作品を原書と翻訳で集中して読んだのはかれこれ10年前。その後、その初期の作品への編集者ゴードン・リッシュさんの深い関わり(カット、リライトなど)が話題になったことがあるが、この本はリッシュさんの関与を経ない初稿集。翻訳者の村上春樹さんによれば、今まで決定稿とされていたものに比べるとざっと倍の分量になるという。
以前に読んだ決定稿(作者による復元などを経たいろいろなバージョンがあるようだが)の細かい記憶は薄れているが、比べてこの初稿集は総体的に重く、長く、暗い。短編によっては救いのない方向へ読んでいて投げ出される思いがしたものもある。そういう意味ではリッシュさんの関与は、作品としての透明度、カタルシスをもたらすのに成功していたと言えるのかもしれない。
アル中や離婚、うまく行かなかったさまざまな賃仕事の体験などを経て、作家として浮上する前のカーヴァーさんが抱えていた負の部分が色濃く表れている作品は、読んでいて重くつらかった。そういう意味では研究者かディープな愛読者向けといえる本かもしれない。