神はそれ自身の中に在る
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「イスラーム思想史」という、およそ世間的にはほとんど知られておらず、また関心を持たれることも少ない分野ではありますが、それにもかかわらずこれほどまでに興味深く「読ませる」のは、やはり著者が井筒俊彦氏だからでしょう。
学問的にも、またその精神性も、井筒氏の場合それほどまでに「深い」のです。
一例として、私が「呻ってしまった」一節をご紹介します。イブン・ルシド(アヴェロエス)について書かれているくだりです。
「神は何処にもいない。ただ、その働きが空気中のありとあらゆるものに拡がり及ぶだけである。神はそれ自身の中に在る。神が空間中に在るのではなくて、寧ろ空間が神の中に在るのである」(p377)