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乳房 (文春文庫)

価格: ¥518
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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誰もが持っている”物語” ★★★★★
5編の短編が収められています。読み始めてすぐに誰かに似ているなぁ、と思いました。
誰かなと記憶をとどって行くとあっ山口瞳さんだ、と感じたのです。
文体ではなく、テイストと言うべき物ですが。
そういえば、山口さんが毎年書かれていた「新入社員諸君」を今は伊集院氏が引き継がれていました。
解説の久世光彦氏は、著者は、太宰が好きなのではないか、と書いています。
伝え聞くところでは、無頼派と言えるのでしょうか。この5編の短編は、実に素晴らしい物語です。
普通に暮らしている人が持っているちょっとした物語を鮮やかに描いています。
特に良かったのは「クレープ」です。離婚したときに別れた娘。まだ乳飲み子でした。高校に入学したお祝いに会って欲しいと頼まれます。その時の父親の胸の鼓動が聞こえてくるような物語でした。
誰もがもっている”小説”を描く視点に暖かさを感じました。
評価の分かれるところ ★★★☆☆
私が感情移入できる人物はやはりいないものの、短編として切り取ったシーンにそれなりの意味を見出せましたし、伝えたいことが言葉の意味からではなく、伝わってくることに作品の質を感じました。


中でも「残塁」と「桃の宵橋」は好きです。特に「桃の宵橋」の娘、母、父の関係ととある仕事の関係が、非常に面白かったです。


ただ、「桃の宵橋」を除く短編の主人公(男、さえない、泣き言多い、都合よ過ぎる、流されやすい)がちょっと。また、そこに作者の影や、佇まいみたいなものまで感じ取らせるので(表題作「乳房」は有名な奥様の事を連想させずにはいられないでしょうし、ある意味チープな同情を呼ぶ話しに、また自分に都合良い話しなってしまっていて何だか悲しい)そこらへんをどう考えるかで評価が分かれるのでしょうけれど、私個人の感想は、伊集院さんの個人的な歴史を無いものとして考えても、どうしても自分を割合棚に上げての哀愁を感じさせる、つまり少し自分に酔ってしまった感じがしてしまうところが少し気になりました。もう少し上手く隠すことで伝わる何かがあったのではないか?と。また、主人公を女にして「桃の宵橋」が書けるなら、もっとできたのでは?と思わずにはいられなかったので。


それでも、読んで良かった短編集です。大きな出来事の後に残る、言葉に出来ない何かを思い出して見たい方、少し弱ってる男性にオススメ致します。
娘の誕生日 ★★★★☆
 5つの短編集。主人公は学生時代に野球をやっており、女性に「自分のことが分かってもらえる」と思わせる様な中年の男です。いろんなことがあり、そしてこれからもいろんなことが起きるだろうなあと感じさせる中年のための青春小説です。
ふと立ち止まって人生を振り返る人たち ★★★☆☆
病気の妻を看病する夫の姿を描いた表題作をはじめ、旧友と会って昔を思い出し、心穏やかでなくなる男を書いた「残塁」、離婚したため長いこと会っていなかった娘と、高校受験合格をきっかけに再会する父を描いた「クレープ」などを収録。

人生も半ば過ぎた男が、ふと立ち止まって人生を振り返ると、そこには過ちも正しかったこともいろいろ詰まっている。そんな姿を暖かい視線で、でも時には厳しくも切り取って見せる、ちょっとウェットな味わいの作品集です。