涙の予感
★★★★★
帯書き(=上記の商品の説明<著者からの内容紹介・内容>)
まずそれだけで、ぐっと胸が詰まる。
しばし立ち止まり、目次に目を移す、そこでまた、立ち止まる。
走馬灯の様に駆け巡る、己の過去が、そこかしこに現れる様で。
涙の予感が漂って。
なにかを待っている
★★★★★
短編集。季節のうつろいと野球というキーワードを織り込んで描かれた美しい情景。亡くしたものへの愛惜の思い、残された者の切なさ哀しさなどを軸にして、この短編集に登場する主人公たちはなにかを待っている。そして待つ間になにかを悟り、一歩まえに進んでいく。
表題「駅までの道をおしえて」はややファンタスティックな作品。犬に死なれた9歳の少女は、その死を納得できず、事実を受け入れることができない。亡き愛犬にそっくりな犬に出会ったことをきっかけに知り合った喫茶店の老マスターと友達になる。彼もまた昔幼い息子を事故で失い、その事実と折り合っていなかった。こうして奇妙な友情で結ばれたふたりは、「待っているもの」を探しに小さな旅に出る。そこで起きるささやかな奇跡。そして少女の心は開かれていく。涙腺を刺激する作品だった。
「シカーダの夏」もよかった。少年時代の淡い初恋と友情。ともに交わした約束を海辺の町を舞台にして切なく描いている。
登場人物がさりげなく発する言葉の中に、書きとめて心のかてにしたいようなものが多くあった。
美しい短編集
★★★★☆
逝ってしまった人への思いは
その死を受け入れることでしか消化できません。
空っぽになってしまった心の喪失感とどう折り合いをつけていくのか、
それは自分自身しかわかりません。
どのお話の主人公たちも美しく、
いつまでも余韻に残るような気持ちのいいラストを見せてくれます。
地味に思いがちな作品群ですが、
味わい深いものがありました。
ちょっと残念です
★★☆☆☆
他の方の評価が高いので「?」の気分です。
伊集院さんファンとしては、短編の名手ならではの爽やかでちょっとせつなくなる読後感を期待して読み始めましたが、残念ながらこの本は期待はずれでした。
とくに一編目は主人公と愛犬の交流を扱ったものですが、あの年代の子は決してあんな考え方をしないと思われ、違和感が絶えずありましたし、愛犬家にありがちな独善的な視点が気になりました。
伊集院さんはご本人の年代前後を主人公にしたもののほうが良い気がします。
表紙のイラストのせいでセット本のように見える「ぼくのボールが君に届けば」の方がお勧めです。
余韻が残る・・・
★★★★☆
過ぎ去った日々、逝ってしまった人。手を伸ばしても、もう二度と触れることは出来ない。人は時々自分の心の奥からそれらを取り出し、懐かしむだけだ。人それぞれに、それぞれの悲しみや喜びがある。作者はしっとりとそれらを描いている。読んでいて、切なくてたまらなくなる話もある。しかし、誰かを、何かを、想い続ける人たちの姿は、とてもまぶしかった。心に余韻が残る話ばかりだった。