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孔子 (新潮文庫)

価格: ¥746
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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孔子の死後、論語成立以前 ★★★★☆
 孔子の架空の末弟子が主人公となって、子と高弟の子路、顔回、子貢との5人で中原を放浪した14年間の想い出を語ります。質疑応答のある講演会のような形式をとっていて、論語の成立過程がこんなものではなかったかと思わせてくれます。
 折に触れて孔子が弟子たちに語ったことばの解釈や、高弟たちに対する評価、孔子という人間の魅力など、小説でならではの形で読者に展開して見せてくれます。最終章では、作者の師弟観、そして「故里」に根ざした深い人生観も示唆されて、八十代で綴った井上靖最後の長編小説にふさわしい仕上がりとなっています。
 「杞憂」の故事で有名な杞の国も登場し、本当に遥か昔の物語なのだと気づかされました。
井上靖のCD・カセット“孔子を語る”と合わせて読みたい一冊 ★★★★★
孔子が3大弟子の子路・顔回・子貢の3人と放浪した14年とその中心思想(天命や仁)に対する解釈を孔子の架空の弟子が語るという形で小説化されたもの。小説の前半で著者のメッセージの大部分は語られ、後半は繰り返しが多いです。孔子のことばと挿話の出典は論語と史記で、井上靖の創作ではありません(論語と史記を参照しながらこの小説を読むのも楽しい読み方です)。論語そのものは、秩序だって配列されていませんが、この本を読むと論語にでてくる各挿話の年代的前後関係、それぞれの弟子の性格、諸国の王たち、孔子の中心思想がわかるようになります。論語の入門書には最適です。この小説の中で、孔子や弟子たちが、名言を何度も声に出して読む場面があります。井上靖のCD・カセットブックの“孔子を語る”は、この小説と重なる部分が多い講演会とインタビューを収録したものですが、その中で井上靖自身が味わい深く孔子の名言を繰り返し朗読しています。論語を声に出して読むことの意味合いが体験でき、CDと本の相互の理解が高まりますので是非おすすめです。
故きを偲ぶ心 ★★★★★
男はつらいよシリーズで、確か寅次郎が旅先で、妹婿のヒロシの父親(志村喬)の世話になった夜、父親が人間の幸福について、寅次郎に諭すくだりがある。それによると、例えば、夕げの支度をする台所からの物音とか、また食後の一家団欒の人声や、それぞれの家々からもれる灯り。そのようなものに、人生の幸せがあるのではないかという。
これはまさしく、この物語の主人公で、孔子の架空の弟子である、エンキョウ氏の師への追想の言葉である。この著者と山田洋次氏の交流を、僕は知らないが、まさしく井上靖は最晩年、己の人生を振り返って、このようは心境になったのではないか。さまざまな作品を作り上げ、膨大な言葉を書き連ねいてきたが、最後にはただひとつ、以下の思いに至ったのではないか。
「人間、この世に生まれたからには、故里に燈火の入るのを見て、ああ、いま、わが故里には燈火が入りつつある、という静かな、何ものにも替え難い、大きな安らぎを伴った、この思いだけは、終生、自分のものとしておきたいものであります。いかなる政治でも、権力でも、人間から、このぎりぎりの望みを奪り上げる権利はないと思います。」
ユニークな論語解釈 ★★★★☆
 孔子の架空の弟子が、孔子の言葉の意味や、孔子がどの弟子を最も愛したかなど語るという内容だが、作者の孔子・論語に対する深い造詣と考察が窺えてとても面白かった(若干文章は冗長な感じがしたが)。下村湖人の「論語物語」と読み比べると解釈のユニークさが際立つのではないか。もちろん、どちらも名作であり、いずれの解釈が優れているということではないが。
目からうろこの珠玉の一冊 ★★★★★
 タイトルは『孔子』ですが、これは孔子の伝記小説ではありませんので、これを読んで孔子の生涯の軌跡がわかるといった類のものではありません。あくまで論語をもとにした、作者による孔子解釈が中心になっています。
 しかし、はじめてこの作品を読んだときには、目からうろこが落ちる思いがしました。どれほどつらかろうと、人間は人間の中で生きなければならず、乱世において世の人を救おうと、死ぬまで努力し続けた孔子の不屈の魂と、包み込むような大きさが伝わってきました。何の前知識もなく最初に読んだときは、これ以上のことはわからなかったのですが、孔子や論語の本をあれこれ読み漁ったあとに読み返すと、作者は孔子に対してかなり独特な解釈をしていることがわかります。天命とは何か、仁とは何か、孔子が最も愛した弟子は誰か。どんな気持ちで「吾れやんぬるかな」と言ったのか。多少孔子を過大評価しすぎなきらいはありますが、大いに納得できるものも多いです。
 まあ、解釈の部分は論語を知らないと少々退屈な部分もあるので、まずは第一章だけでも十分だという気がします。第一章は、孔子の中原放浪の後半期が小説形式で語られており、人の胸に響く孔子の詞は、すべてこの中に凝縮されているのではないかと感じました。