「冬の夜の子供の為の子守歌」は、フランスの詩人ジャック・プレヴェール(シャンソン「枯葉」の作詞者)の作品に曲をつけたもの。
冬の夜、寒さに追われて雪だるまが小さな家に入ってくる、赤い暖炉の前に座る、残ったのは水たまりにパイプと帽子だけ…、というメルヘンチックな、でもよく考えてみるとドキリとする不思議な詩。
これに「まるで南仏のトラッド・ソングでも聴いているような、まろやかな手触りが感じられる(text by 小川真一)」高田さんの曲がついて歌われている。渡さんの曲ではもっともポピュラーな印象の歌で、みなさんどこかで聴いたことがあるはず。
CDの表題になった「ねこのねごと」。「あのね、あのよは、なかなかこんね…」などという、木島始さんの詩に曲をつけたもの。人間長く生きると、こんな言葉が身にしみる。
若い世代で、高田渡さんに興味がわいたら、このアルバム『ねこのねごと』がおすすめかも。
古くからの渡さんのファンにも、得意な酒をうたった歌も入っています。
「酒を飲みたい夜は 酒だけではない 未来へも口をつけたいのだ…」
石原吉郎さんの詩に曲をつけた「酒を飲みたい夜は」。これもずしんと身にしみますね。
渡さんは、同じ歌を繰り返し録音していますが、そのたびに違った味の歌になっています。山之口貘の詩に曲をつけた名曲「石」も、このアルバム固有の曲になっています。
「二十年以上も前につくった歌を、僕は今も歌い続ける。その歌は、時代を経ることにより、また違った命を与えられるような気がする。 歌というのは古い家だ」(著書『バーボン・ストリート・ブルース』より)
あの世でも、違ったヴァージョンで同じ歌をうたっているのかなぁ?