耐震偽装を予見――でも、おもしろさはそれだけじゃない
★★★★★
この巻でメインとなるエピソードは、最長の5回連載分からなる「不動産詐欺」である。ここでは、前々から気になるキャラクターのシロサギ白石が再登場し、彼の過去が明らかになるとともに、巨悪を喰うために一時的に共同戦線を張ることになる。
「身分詐称詐欺」の標的は一個人だが、なかなかに大きな仕掛けを張ってあざやかに金を騙し取ってみせる。
お堅いこの2エピソードとともに収録されている「出張ホスト詐欺」は、一人当たりの被害額が3万円と少額なうえ、軟派なテーマなため、気分を変えて気軽に楽しく読める。被害者の軽いキャラクターも憎めないし、彼相手に黒崎が諭す部分も、同年代の友人からアドバイスしているふうに見えてなかなかよく、その言い分もうなずけるものがある。
「クロサギ」でストーリーの柱となるのは、詐欺のテクニックであるのは当然だが、合間にちらと挿入されるこのようなキャラクターの人間的な表情もまた、このマンガの魅力なのである。それと、おまけ的だが、裏表紙の絵などでさりげなくマニアックな読者の心をくすぐるやり方には、作者の遊び心が感じられて楽しい。