人物描写がおもしろい
★★★★☆
この小説のモデルとなった会社に実際に勤めていた者です。小説が始まる年の2年後、バブルの最中に入社したので、当時自分の周りで起こっていたことにつながりました。実際に存在した人物が何人も登場しており、ゼネコンの栄枯盛衰を目の当たりにした自分にとっては複雑な気持ちで当時のことに思いを馳せました。実在した人物の特徴をあまりにも正確に描写しており驚くと同時に苦笑の連続でした。ゼネコンの表と裏の社会をうまく描いている作品でもあり、話のテンポが良いので一気に読んでしまいました。
必要悪?「談合」
★★★★☆
経済小説。バブル崩壊前の建設業界を描いている。
大手ゼネコン「東和建設」のメーンバンクに勤める山本が出向を命じられるところからスタートする。
そこで建設業界の様々な一面を見ることになる。
政治力がものを言う世界。騙し合い。談合は当たり前の世界。
物語とは別に「談合」については、考えさせられるものがあった。
果たして「談合」は必要悪なのだろうか?
毎回思うが、人物の心情表現が巧みさがすごい。
ありありとその場その場の臨場感が伝わってくる。
そして、社長業の難しさ。まったく違った価値観を持った人達を同じ方向に持っていかなければならないが、
まわりにYesマンばかり集めてしまうと大きな損失につながる難しさなど。。。
ストーリー、内容はもちろんおもしろいく大変満足な作品であり、それ以上に様々勉強になる一冊。
サラリーマン
★★★★★
物語の最後のほうにでてくる、
東京都庁舎の建設に関わるビックネームの週刊誌的な裏話は
ちょっとおもしろいなあとおもったけど、
全体的にはなんか、複雑な人間関係のなかで、
優等生的なサラリーマンがいかに上手く立ち回るかというお話で、
別にゼネコン会社が舞台でなくてもよかったのだろうなあと感じた。
真面目に働いているサラリーマンの方々は、
この本を読むと、どこの会社も同じだなあと、
溜息混じりに感じるのではないかという気がする、たぶん。
私はサラリーマンではないので分からないが。
ちょっとくたびれた感じのおじさんサラリーマンが、
電車の中で読んでそうな小説。
というか、そんな雰囲気が漂う小説といった方が近いか。
おもしろくて何回も読みなおしたよ
★★★★★
高杉小説らしく、ある判断に至るまでの見えない背景を迫真の描写で描かれています。非常にリアルに描かれています。
一つの決断に至るまでに多くの人間がそれぞれに苦悩した上で決められている様子が実感でき、多角的なものの見方ができます。
面白く充分ゼネコン業界を垣間見られます。
タイトルはゼネコンでいいのか?
★★☆☆☆
①内容自体
内容としては,ビジネスの世界を覗いたり社長室の世界を垣間見るのには良い小説であり,主人公もサラリーマンからみて好感を持てると思います。その意味ではわりと良く書けていると思いました。
②ゼネコンについて書かれているか?
出向先の建設会社の海外との事業提携の交渉,メインバンクの座の争いなどが書かれており,それはそれで一応面白いです。
ですが,ゼネコンと言えば工事の受注過程における談合その他の交渉の過程を連想するのが普通でしょうが,そういうことは殆ど書かれていません。
自分は,そういった建設業界の様相を勉強する意味を込めてこの本を購入したのですが,ちょっとタイトルにだまされたかな,とすら思いました。
高杉氏の作品は始めてだったのですが,他の作品を読む際には内容を良く確認してから買おうかなと思います。
ちなみにタイトルは,「ザ・出向」とか「ザ・社長秘書」が適切かなと思います。
③評価
小説自体は割とテンポもよいのですが,タイトルとの不整合,内容が迫真性に欠ける(事業提携の交渉もおそらく著者が実際にそのようなビジネスの体験をしていないからか,どこか切り込みが甘い気がしますし,ビジネスの醍醐味を垣間見ることはできませんでした)ことから星二つとしました。