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日本の歴史〈10〉下克上の時代 (中公文庫)

価格: ¥1,300
カテゴリ: 文庫
ブランド: 中央公論新社
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『下克上』の捉え方−構造としての社会変動− ★★★★★
 本書は戦後歴史学の中にあって、長年日本中世史をリードしてきた著者による一般の読者向けに書き下ろされた“15世紀史”である。
 従来の“中世後期史”といえば南北朝内乱以降を対象としているが、本シリーズのコンセプトとしては“南北朝内乱〜足利義満による幕府体制の成立”までを1つの時代として扱っているのでその意味では本書の構成は些かおもむきを異にする(それも1つの時代像把握としては妥当でもある)。
 本書の歴史叙述で際立つのは歴史用語としての従来の『下克上』のイメージのあり方を“社会構造”の枠組みの中で捉え直している点にある。ともすれば戦国大名に象徴される英雄の物語に終始しがちな『下克上』を百姓(=ひゃくせい、と読んで民衆のことを意味する)・寺社・公家・武家の4つの階層全てにフォーカスをあてることによって“トータルとしての時代像”を描き出し、それによってもたらされた社会変動が『下克上』である。
 そのため引用された史料は公家や寺社の日記から『たまがき書状』(東寺百合文書所収)まで幅が広く、そこには中世に生きた等身大の人間の鼓動が伝わってくる。
 著者はその後も『小学館版−日本の歴史』などの概説書も手がけているが、そのベースである点は本書と変わらない。歴史の捉え方を少し変えて“民衆から見た時代像”に触れることで新たな“中世社会の姿”をそこからうかがい知ることができる。著者自身による後書きからは歴史学徒自身による“自己検証の必要”を改めて知ることができる。