前作とは違った意味で、異色作といえるアルバムである。というのも、サイモン&ガーファンクルやエヴァリー・ブラザーズのカバーを含め、収録曲のほとんどが他人の曲である。また、オリジナル曲もインストや女声コーラスに歌わせたものなど、ディランの声が聴こえないものが多い。69年のワイト島で行われたライヴ録音の4曲も、決して絶好調とはいえない演奏だ。タイトルの由来も含めて意図が見えにくいアルバムだが、単に彼が気楽に録音したものと思って聴くのがよいだろう。(星野吉男)
廃盤の「Dylan」込みで再発希望
★★★☆☆
これまではへんてこなアルバム、というのが定位置だったと思うのですが、クリスマスアルバムまで出してしまったアメリカのポピュラーミュージック探検モードの今のディランの方向性の芽は実はこのアルバムにあるとおもいます。そのあたりをこの盤で再確認してみてはいかがでしょうか。
ディランの地声(なじみの声は喉を詰めて発声した「作った声」)が聞ける数少ないアルバムでもあります。もうこの地声もつぶれてしまったんでしょうね。
廃盤になった「ディラン」(このアルバムのアウトテイク集といっていいのでは?)を含める形で、再発を希望します。
心地よく構成されてる、カバー中心の「自画像」
★★★★★
元々LP2枚組みで、20トラック以上あり、多種多様な曲構成なのに、
全体を通じてとてもよくまとめられている印象で、ディラン作品の中でも好きな方です。
Self Portrait自画像というタイトルからも、恐らくディランが影響を受けたタイプの音楽、
好きな音楽のサンプリングなのでしょう。型にはまらず、ある程度ファンの期待を裏切る事でむしろ長期的な人気を保ってきたディランらしく、懐の深い選曲です。保守イメージのカントリー、リベラルイメージのフォーク、民謡のようなものでも恋歌や炭鉱夫の歌、殺人事件歌(murder ballad)タイプの曲など幅広く網羅し、ディランなりの、アメリカ音楽全体への愛の表現、という印象です。力の抜いて(抜きすぎて?)歌っているような、ワイト島のライブからの数曲は、ディランの伴奏の中では一番、ザ・バンドらしいサウンドで、一番好きです(このライブ演奏全体の発売を心待ちしてます)。
間違いなく怪作ですが、買いです!
★★★★★
70年代の幕開けを飾る2枚組(アナログ)!しかも題名が謎めいた男ボブディランの「self portrait」とくれば、誰だってブロンドオンブロンド以上の強烈なアルバムを期待してしまうだろう。ところがディラン氏はいきなり「おかあちゃ〜んっ!」と叫び声を上げたレノン氏のようには素直ではないのである。
そもそも、このアルバムが不人気なのはいきなり訳のわからない女性コーラスではじまるところもあるけれど、あまりにも脱力なノーディレクションホームのエンディングを引き締めたあの鬼気迫るライカローリンストーンの対極にある12が象徴しているのではないか。演奏メンバーは同じなのに、とってもゆるい。 は〜いい季候になってきだべ。とでもいいたげな
そもそもこの時期、悪名高き「ナッシュビルスカイライン」のすぐ後なのである。あの鼻声である。美声ともいわれる例の奴。演奏も全体にカントリータッチでのどかなのである。イヤ〜リラックス。こういうの怒る人はいるかもな。
ナッシュビルとニューモーニングの間に位置するこのアルバムはこの鼻声と通常の我々がよく知るシャガレーが7:3ぐらいの割合でちゃんぽんに現れ、まじめな人ほど戸惑うでしょうなぁ。特に16、サイモンとガーファンクルをシャガレーディランとナッシュビルディランがハモるひっちょうの大傑作である。凄い!こんなおもしろい人いないよ、もうこれだけで星5つ(まじめな話)。
だけど、ワタクシのようなカントリーディラン好きにはたまらないアルバムです。本当です。なんでこれがself portraitなのかさっぱりわからんが、(むしろbootlegシリーズの0番と言っていいでしょう)そもそも大量の未発表曲をグレイテスヒットに入れちゃう人だから(あのマイティクイン、ここが初出ですね)カバー曲も(ほとんど本歌知らないせいもあるけど)キッチリ勝負してます、鼻声で。ロジャース&ハートまで神妙にいっちゃいます。本人は至ってまじめなんだと思います、が?
とらえどころのないアルバム
★★☆☆☆
わけ分からん一曲目から、サイモン&ガーファンクルのカヴァーあり、なにかと「らしくない」作品。統一感もないし。ディランの作品を全部聴きたい人向け。