難点としては、こうした「違い」に対する筆者自身の
分析があまりにもパッチワーク的で、明快でないことです。
筆者が唱える「関係主義」なるものを数多くの学者の意見を
散発的に引用しつつ、解説するわけですが、
いまひとつ理解に苦しみます(勿論、これは読み手である
私の問題かもしれません)。
中根ちえやルース・ベネディクトによる日本人論のような!
緻密かつ直感にも訴える論は本書には期待できません。
読了後、若干不満が残る点から、★2つにしました。
筆者自身はあとがきで、「これほどまでに社会学的データを
読み込んだものはそう多くはないだろう」と書いていますが、
正直どのあたりが社会学的なのかは???であり、むしろ
私はアネクドータルな中国人論を読みやすく整理した点を
評価したいです。
蛇足ですが、筆者の指導する博士課程の学生の分析を
筆者は興味深いとして、引用しているのですが、
その学生の名前が書かれていません。
これは筆者の知的マナーを疑わざるを得ません。