「前近代」の作品なれど、佳曲多し
★★★★★
スティービー・ワンダーが本物の彼になったのは、71年の「青春の軌跡」からであるとおもう。
今回、初めて70年作の「愛するあの娘に」を聞き、そのことを確かめた。件の作は、まさしく、過渡期というか、端境期のサウンドであったからだ。
では、その前年の本作は、さらに古めかしく退行しているか...といえば、これがそう簡単にはいかない。
むしろ、前近代的な制作方法、つまり、LP(アルバム)は単なる曲の寄せ集め、的なところで、逆に、各トラックの独立したよさが際立っている。個人的には、「愛するあの娘に」より出来の多い曲が多いとおもうが、どうだろう?
たとえば、「マイ・シェリー・アモール」なんかは、60年代スティービーの最高傑作のひとつだし、「アンジー・ガール」もよい。
何故かヒットから二年後にカバーされたドアーズの「ハートに火をつけて」も原曲の世界からは遠ざかっているようにも思えるが、それなりにスティービー色に染まっていて、結構面白い。
ただ、「磯鴫」だけは、はっきりいって、19歳のガキが唄うべき曲じゃないので、失敗作だとおもうが...
70年代とは別物、ということを踏まえたうえで聴くならば、かなりの傑作とおもう。
from here
★★★★☆
モータウンの看板シンガーの一人であったスティービーワンダー.現在でこそ自分で作詞作曲編曲をこなす彼ですが,もちろん最初からそうであったわけではありません.このアルバムがいわばその足がかりになっていく作品です.タイトル曲のMy Cherie Amour,いい曲です.
最高です
★★★★★
スティービーワンダーのキャリアのピークは一般的にはこの作品よりも後であると認識されているようですが、この作品も最高です。ストリングスが印象的なアレンジ、すばらしいメロディ、表現力豊かなボーカル、全編ポジティヴな力がみなぎっています。例えば、作品中ドアーズの「ハートに火をつけて」をカヴァーしているのですが、オリジナルのバージョンと比較して聴くと、スティービーワンダーの音楽の本質、というものが相対的に浮かび上がってくるような気がします。それは彼が失った光のかわりに音楽で体現している輝きのようなものです。