《船宿たき川捕物暦》シリーズ第2弾
★★★★☆
「青鬼」の異名を持つ小野流一刀流道場の師範代・真木倩一郎が、
江戸の岡っ引きの総元締めである二代目米造を襲名してから三月。
八百善という料理屋の娘・お美代が、奇怪な頓死を遂げる。
米造が探索に乗り出した矢先、配下の清次が何者かに斬られてしまい……。
特にミステリ的仕掛けがあるわけではなく、未回収の
伏線もいくつか残した状態で、本作は幕を閉じます。
そのあたりは続篇で、ということなのでしょうか。
著者の現代ものの主人公たちは、自分と世の中とのギャップに疲れ、
屈折した物言いや身振りを示すことが多いのですが、本作の主人公は
おおらかな江戸っ子の世界を背景に、完全無欠なスーパーマンとして
描かれているため、現代人の苦悩や屈託からは自由でいられます。
それをあえて辛口に評するなら、現代人が時代劇のコスプレで
ストレスを発散している、ということになるのかもしれません。
このあたり、時代小説のプロパーな読者が、本作を
どのように評価するのか、聞いてみたいところです。
また、著者も“ユートピアとしての江戸”のみを描くのは居心地が悪いのか、
今回から、東北の飢餓というシビアな世相も物語の背景として描かれます。
そういった設定が、今後の展開にどのような影響を及ぼしていくのか、
注目していきたいです。